川木哲也「そうだ。でも少しだけ内容は変えた。まず、絵菜ちゃんが『間違えてメリーをゴミ袋に入れた』所。本当は弟の奥さんが燃やして捨てたんだ。そして、彼女の両親は絵菜ちゃんが可哀想に思って新しい人形をあげたんじゃない。メリーを思い出さない様にする為だった。そして何より違うのは、絵菜ちゃんは怖がらず寧ろ『喜んだ』んだ。」
環「喜んだ……?」
川木哲也「絵菜ちゃんは『メリーが戻ってきてるの!ほんとよ!あともう少しであえるの!』って、喜んで私に電話を寄越した。それでおかしいと思って急いで絵菜ちゃんの家へ行ったんだ。そしたら、電話機にそんな記録もないし絵菜ちゃんはずっと笑顔で笑っている。急いで私は精神病院に連れて行ったさ。けど病院では、強いショックを受けたせいで一時的にパニックになってるだけって突き放された。その後、弟夫婦にこっぴどく叱られたしね。…けど、それからどんどん絵菜ちゃんはおかしくなっていった。ある時、顔が燃やされたメリーを持って帰ってきたんだ。」
私「持って帰ってきたって、捨てたんじゃなかったんですか?」
川木哲也「私も捨てたと思ったんだが、何故か絵菜ちゃんは持っていた。何故持っていたのかは私にも判りません。そしてそれから一ヶ月後、絵菜ちゃんは部屋に火を放ち焼身自殺した。あの人形が捨てられた『四時二十一分』にね。絵菜ちゃんは、決してメリーに呪われた訳じゃない。親からの虐待によって精神が狂い、幻覚を見て、死んでしまったんだ。」
全ては私が人形をあげてしまったからだ。川木哲也はとても後悔していた。
川木哲也「……だから、私が責任を持ってこの人形を処分しなければいけない。」
川木哲也は鞄からガサゴソと何かを取り出した。
環「…なんで持ってるんですか!」
それは顔が黒いフランス人形———メリーだった。
川木哲也「私も判らない。絵菜ちゃんが亡くなった翌日の四時二十一分、物音がして寝室を見たらそこにあった。……君達、本当は記者じゃないんだろう?」
私「…気付いてたんですか」
川木哲也「ああ。どうせこの話は世に出回らないだろう。そもそも、あの本だって、今じゃどこの本屋にも置かれていない。あるとしたら、古い図書館ぐらいだ。」
環「『怪闇小噺』が、ですか?」
川木哲也「メリーさんの電話の『あなたのうしろにいるの』の後があまり語られていないのは、何故だと思いますか?」
私「……あまりにも、悲惨な結果だったから?」
川木哲也「残念だが不正解だ。正解は…『読んだ者は生きていない』だ。所謂、死人に口無しって奴だな。」
私「……はい?」
川木哲也「あの話を読んだ者は皆、死んだ。「火」関係でな。私の知り合いでも死んだ人がいる。君達も読んでしまっただろう?だからこの話を話した。」
私「つまり、どういう事ですか。」
川木哲也「纏めて言うと…」
昔、メリーという名前の人形を大事にしている少女・川木絵菜ちゃんがいた。その少女は毎日メリーを可愛がったが、彼女の両親はメリーを不気味だと思っていた。ある時から両親はメリーを捨てろ、と絵菜ちゃんに言い、暴力を振るう様になった。そんなある日、川木一家は引越しをする事になった。その時、彼女の母親は絶好のチャンスだと思い、メリーを燃やして捨てた。絵菜ちゃんは、今まで両親から受けた暴力と大事な人形の消失で、精神が狂ってしまった。「メリーが戻ってくる」という幻覚を見て、一日中ずっと笑っていた。そして彼女は自室で焼身自殺をした。それからこの話を読んだ者も火に関係する死に方をした。メリーが燃やされた『四時二十一分』ぴったりに。
だから「メリーさんの電話」の、「あなたのうしろにいるの」の後が語られないのは、語れる者は生きておらず、知ってしまえば死ぬからである。
川木哲也「…って事さ。取材は終わりだ。君達、帰り道気を付けてお帰りなさい。」
取材は終わり、川木哲也は公園から去っていった。私はレコーダーのスイッチを止め、環と共に電車に乗った。疲れていた為、私達は座席で転寝していた。
時刻は午後四時二十一分、電車内で火災が発生した事に、私達はまだ気付いていない。
ー ー ー ー ー
川木哲也「その後、彼女達は電車の火災に巻き込まれ、亡くなってしまったのだ。怪談は時に、新たな怪談を生み出す事がある。その怪談を、『触れてはいけない話』なんて言ったりもする。」
この話を読んでしまった貴方も、お気を付け下さい。
「『メリーさんの電話』についての調査」というお話でございました。

























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