村の長は、青ざめた顔で男に訴えた。
「神様、このままでは村は滅んでしまいます。どうか、どうか、雨を降らせてください」
男は焦った。もう逃げることもできない。村人たちの目には、すでに飢えと絶望が宿っていた。その目に映る男は、もはや救世主ではなく、ただの嘘つきでしかなかった。
「お前たちが私を偽物だと疑っているからだ!信仰心が足りぬ!ならば、私を真に祀る者が必要だ。誰か、私に心臓を捧げよ!」
男の言葉は、もはや正気を失っていた。その言葉に、村人たちは顔を見合わせ、やがて一人の若い女が進み出た。
「私が捧げます。私の心臓を捧げますから、どうか村を救ってください」
女の言葉に、男は息をのんだ。女の目は、純粋な信仰に満ちていた。男は恐怖に駆られ、嘘だと叫ぼうとした。しかし、その声は喉につかえて出なかった。
女は男の前で静かに横たわり、懐から小刀を取り出した。そして、迷うことなく自らの胸を突き刺した。女の血が、地面に赤い染みを作っていく。
その時、空が黒い雲に覆われた。ゴロゴロと不気味な雷鳴が響き渡り、やがて激しい雨が降り始めた。それは、作物を慈しむ雨ではなく、すべてを洗い流すかのような、狂暴な雨だった。
男は震えながら、雨に打たれ続けた。村人たちの目には、もはや怒りも悲しみもなかった。ただ、虚ろな光だけが宿っていた。
雨は止むことなく、村を洪水が襲った。村人たちは流され、家屋は崩壊した。男はひとり、崩れ落ちた社の跡に佇んでいた。
やがて、雨が止んだ。男の足元には、干からびた川の水が満ちていた。しかし、その水は赤く濁っていた。
男は、水面に映る自分の顔を見た。その顔は、もはや男のものではなかった。目には虚ろな光が宿り、顔全体が干からびた木のようにひび割れていた。
男は、自分の喉の奥から「我は、この山に宿りし神なり。我の名を騙ることは許さぬ。それを疑うことなく信じた集落の者も愚かである。」という声が聞こえるのを聞いた。それは男の声ではなく、どこか遠い場所から聞こえてくるような、ひどく冷たい声だった。
ピシャリピシャリ…
男は、血と雨で濡れたこの村を永遠にをさまよい続ける運命となったであったそうな。
3つ目にしてようやく少し怖くなってきましたね。
まぁ、ここに来るような人たちには物足りないでしょうか?
それではまたいつか。


























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