見ちゃいけない気がした。
そのときだった。
ピチャ…
音がした。
最初は気のせいかと思った。
ピチャ…ピチャ…
確実に、何かが滴っている音。
目を落とすと、床が濡れている。
5人の足元から、ゆっくりと広がっていた。
音の出処は分かっていた。
分かっていたけど、見たくなかった。
でも、見てしまった。
全員、口を開けたまま下を向いていた。
目に光はなく、口角だけがわずかに上がっている。
笑っているようにも見える。
その開いた口から、ダラダラとよだれが垂れていた。
それが、床に落ちていた音だった。
床に落ちたよだれが灰と混ざりあった匂いが鼻をつく。
次の瞬間、一斉に視線が合った。
「見られた」というより「見つかった」だった。
身体が動かない。
呼吸が浅くなる。
そのまま何秒か固まっていると、
搭乗案内のアナウンスが流れた。
その音で、意識が戻った。
俺はタバコをその場に捨てて、ほとんど逃げるように外へ出た。
扉が閉まる直前、中から、小さく音がした。
……チッ
重なった舌打ちの音がした。
飛行機に乗り込んでからも、落ち着かなかった。
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