「僕もBさんもオカルトやホラーが好きだということが一緒だってわかって、話が弾みました。買ってきたお酒なんかは全部飲んじゃって、途中で二人で買い足しに出ましたね。だんだん酔いが回ってきて、話がヒートアップして、それで」
「マンションの視線の話になったんです」
「もう、完全に出来あがっちゃってますから、『絶対なにかいるんだよ』とか『隠れてないで出てきやがれ』とか、普段Bさんが言わないような乱雑な言葉も出たりして。僕も調子に乗って悪ノリをして、『気持ち悪いストーカー野郎は今すぐ出てきてくださーい』とか言ったんです。そうしたら、どこかから男の声で」
「『いまいきます』って聞こえたんです。その瞬間、酔いがすぅーっと冷めたのを覚えています。Bさんも無言になって、二人で顔を見つめ合っていました。」
「窓を見ると、男の顔がありました。虚ろな瞳で、どこを見ているのかわからない無機質な表情をしていました。僕はもう声も出せなくて、でも目を逸らすこともできなくて。男と目が合い続けたまま、呼吸を止めていました」
「すると、男の口元が不自然に釣り上がり出して……笑ったんです。まるでネジを回して動かしているみたいに……。その機械じみた笑顔が本当に恐ろしくて……」
「男の顔は笑った表情のまま、窓の下の方へ、ストンと落ちていきました」
その後、SさんとBさんは二人で窓を開けて男の姿を追ったが、なにも見つけることはできなかったという。
男の風貌についてSさんは、その場では言い出せなかったが、どこかBさんに似たところがあったと語った。後日それとなくBさんに言ってみると、「実は、僕もSくんに少し似ていると思っていたんだ」と驚かれたそうである。
最終的には「このマンションで住んでいる人に似た顔」という意見で一致した。
これは想像に過ぎないんですが、とSさんは前置きをして言う。
「あいつが笑ったのは、そういうことだと思えてならないんです。僕たちの姿を真似て、『ほら、上手くできただろう?』って……。もしそうだとすると、あれは」
絶対に人間じゃありません、とSさんはそう語った。

























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