(くっそ、ズランプめ。いつかそのズラひっぺがしてやる)
朽屋はジト目で大統領を一瞥しながら敬礼をし、執務室を後にした。
(ふふふ、いいツラ構えをしておる。・・・わしが合衆国大統領ドナルド・トランプである)
・・・・・・・・・・・・
別室の会議室に入ると、そこには大きなテーブルといくつかの席が設けられており、
数人の制服組の担当官と、もう一人、白い清楚なドレスで車椅子に座った老婆がいた。
肌も白く、幾分ふくよかな体形で、美しいグリーンの瞳をしている。
「マザー・エレノア、日本から朽屋瑠子が参りました。瑠子、こちらエレノア・ルシール。占星術師であり、我々はマザーと呼んでいる。合衆国の生きた秘宝だ。まだお若く見えるが、とうに95を超えておられる」
そう制服の将校が紹介する。
「は、はじめまして、朽屋 瑠子です (ひえ~95?この婆さん、確かにタダものじゃないな)」
「よく来てくれましたね、瑠子。楽にしてお掛けなさい」
制服の将校も自己紹介して朽屋に握手を求めてきた。
「私は統合参謀議長のダン・ケインです。今回の作戦での指揮を任されています。
よろしく頼みますよ、瑠子」
「ハイ。あのぅ議長。ひとつ確認しておきたいのですが」
「なんですか?」
「来る途中の機内で、ベネズエラとその大統領に関する資料を拝見したのですが、今回の作戦に要人への狙撃や殺害などが含まれているのでしょうか?」
「あぁ、そのことなら心配いりません。要人狙撃は必要ありません。キミたちとの組織とも話はついています。それに第一、人を狙撃するだけならわが軍にも優秀なスナイパーはゴマンといますからね。・・・そう言うキミは、人を撃った経験はないのですか?」
「ハイ」
「そうですか・・・。軍服は着ていても所詮はイミテーション、というわけですね。軍人であれば人を殺さないという選択肢はないですからね。人を撃つことに躊躇していたら、戦場では生き残ることはできませんよ、瑠子」
「ぐっ」悔しい気持ちだが、正論ではある。朽屋の表情が一瞬歪む。
「ダン、若い子をそういじめるものじゃないわよ。瑠子だってそのくらいのことはわかっているわよ。第一、瑠子にはもっとスペシャルなオペレーションが向いているわ」
「そうでした、マザー。すまないね瑠子。こんな新兵を諭すような言葉でキミを馬鹿にする気はなかった。キミは確かに特別だ。100万の兵力よりも貴重な存在だ」
そう言ってダン・ケインが謝罪する。
「ダン、お茶にしましょう。アール・グレイの良いものがあったでしょ? あとスコーンとクロテッドクリームとジャムをお願いね。瑠子も長旅で疲れているんだから、甘いものを食べて少しリラックスした方が良いわ」
マザー・エレノアはまるで田舎のお婆ちゃんのようだ。誰も逆らえない。
朽屋もなんだか助けられたような気がしていた。
ホワイトハウスの会議室に甘い香りが漂いはじめていた。

























Manaです。自分で書いてて一番楽しい、朽屋瑠子シリーズ。今回は今年初めに大事件の起こったベネズエラを舞台に、朽屋の活躍を描いたものなります。少年と絡むことで、オネショタ好きな界隈には受けたかもしれないですね。途中から登場のミゲル隊長は自分の中ではランバ・ラルのイメージです。
ところで、自分的に一番ショックだったのが、これを書いてる最中にアメリカがイランを攻撃しちやって大変なことに・・・せっかく最新の戦場を描こうとしたのに、もう古くなってしまいました。
現実の方が物語より早いし、そんなシナリオ描けません。
まさかトランプさん、エプスタインとかから目をそらしたくてこんなことしてんじゃないでしょうね~なんて思ったり。
一応物語はフィクションということで、お楽しみいただければと思います。
・・・それでは、チャオ。