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妖怪・風習・伝奇

狐御前さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

禍憑神①
長編 2026/02/05 18:05 352view

 俺はいま社会人だ。
 忙しい毎日の中、ふと大学時代のことを思い出すことがある。
 これから話すのは、そんな学生時代に俺が実際に体験した出来事だ。

 俺が通っていたのは、某S大学。
 暑い夏休み、普段は課題やバイトで埋まりがちな日々に、ちょっとした刺激がほしいと思った。
 ある日のこと、友人の伊藤とコンビニの前でダラダラしゃべっていたとき、ふとこう切り出した。

「なあ、夏休みっぽいこと、なんかしないか?」

 伊藤は即座にノリノリで返してきた。

「肝試し行こうぜ!」

 俺は普段、こういうオカルト系にはあまり縁がない。

 けど、高校時代は部活や受験勉強でそんな暇もなかったし、たまにはいいかと思った。
 それに、伊藤といると妙にテンションも上がる。

 どうせならと、同じサークルの先輩、大学3年の斎藤さんも誘うことにした。
 先輩は頼りがいがあって、場を盛り上げるタイプ。三人なら怖いものなし、そんな気がした。

 目的地に選んだのは「犬鳴村」。
 正直、聞いたことはあったが、どこか現実味のない、都市伝説のような響きの場所だった。

 夏の夕暮れ、車で現地に着くと、湿気を含んだ空気がもわっと肌にまとわりついた。
 周囲は思ったより静かで、古びた標識と草の伸びきった道が、どこか不穏な雰囲気を醸し出していた。

 少し歩くと、遠くにホームレス風のおっさんが座っているのが見えた。
 俺たち以外に人影はなく、拍子抜けするほど何もなかった。

 ただ、その空気が、逆に妙な緊張感を生んでいた。

 奥の方へ進むと、洞窟の入り口が人工のコンクリート壁で塞がれている。
 壁にはスプレーの落書きがびっしり。
「ここ、不良の溜まり場なのかな」と、俺は内心で呟いた。

 伊藤と斎藤先輩は「ちょっと奥まで見てくる」と言って、二人で歩き出した。
 俺は、なんとなくその場に残ることにした。
 正直に言えば、少し怖かったし、いざという時の“逃げ場”を確保したかったのかもしれない。

 しばらくぼーっと立ち尽くしていると、ふと足元の草むらに小さなお地蔵さんを見つけた。
 苔むして、かなり汚れていた。
 なぜか気になって、持っていたタオルで優しく拭ってやった。

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