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妖怪・風習・伝奇

狐御前さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

禍憑神①
長編 2026/02/05 18:05 248view

 その瞬間、周囲の空気がわずかに変わった気がした。
 気のせいだと思いながらも、なんとなく背筋に冷たいものが走る。

 しばらくすると、伊藤と先輩が戻ってきた。
 だが、さっきまでの陽気な雰囲気はどこへやら。二人とも無表情で、俺の腕を無言で掴み、奥へ引っ張ろうとする。

「おい、放せよ」

 思わず声を荒げたが、二人は全く反応しない。
 その無機質な瞳に、背筋が凍る思いがした。

「これ、絶対ヤバい奴だ…」

 直感が、全身に警告を発していた。

 俺は咄嗟に体をひねり、二人から距離を取った。
 そのまま全神経を集中させると、周囲の世界がスローモーションのようにゆっくりと動き始めた。

 斎藤先輩が無表情のまま、何かに操られるように俺に手を伸ばしてくる。
 俺はその動きを見切り、反射的にパリィした。
 自分でも驚くほど冷静だった。

 次の瞬間、時間の流れが一気に加速し、俺は二人を気絶させてしまっていた。
 自分でも何が起きたのかわからなかったが、気がつけば静寂だけが残っていた。

 しばらくして、二人はゆっくりと意識を取り戻した。
 事情を聞くと、「洞窟の前で突然意識が遠のいた」と言う。

 その後の記憶は、まるで夢でも見ていたかのように曖昧らしい。

「きっと、何かに取り憑かれてたんだ…」

 心のどこかでそう確信しながらも、俺は深く追及することはやめた。
「帰ろうぜ」とだけ伝え、三人で黙ったまま車に乗り込んだ。

 帰り道、車窓に流れる夜の景色が、やけに現実離れして見えた。
 あの日、あの場所で、俺たちはいったい何を体験したんだろうか。

 今でも、ときどき思い出してしまう。
 そんな夏の夜の出来事だった。

 ◇◆◇◆◇

「キミをこの大学から追放する」

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