その瞬間、周囲の空気がわずかに変わった気がした。
気のせいだと思いながらも、なんとなく背筋に冷たいものが走る。
しばらくすると、伊藤と先輩が戻ってきた。
だが、さっきまでの陽気な雰囲気はどこへやら。二人とも無表情で、俺の腕を無言で掴み、奥へ引っ張ろうとする。
「おい、放せよ」
思わず声を荒げたが、二人は全く反応しない。
その無機質な瞳に、背筋が凍る思いがした。
「これ、絶対ヤバい奴だ…」
直感が、全身に警告を発していた。
俺は咄嗟に体をひねり、二人から距離を取った。
そのまま全神経を集中させると、周囲の世界がスローモーションのようにゆっくりと動き始めた。
斎藤先輩が無表情のまま、何かに操られるように俺に手を伸ばしてくる。
俺はその動きを見切り、反射的にパリィした。
自分でも驚くほど冷静だった。
次の瞬間、時間の流れが一気に加速し、俺は二人を気絶させてしまっていた。
自分でも何が起きたのかわからなかったが、気がつけば静寂だけが残っていた。
しばらくして、二人はゆっくりと意識を取り戻した。
事情を聞くと、「洞窟の前で突然意識が遠のいた」と言う。
その後の記憶は、まるで夢でも見ていたかのように曖昧らしい。
「きっと、何かに取り憑かれてたんだ…」
心のどこかでそう確信しながらも、俺は深く追及することはやめた。
「帰ろうぜ」とだけ伝え、三人で黙ったまま車に乗り込んだ。
帰り道、車窓に流れる夜の景色が、やけに現実離れして見えた。
あの日、あの場所で、俺たちはいったい何を体験したんだろうか。
今でも、ときどき思い出してしまう。
そんな夏の夜の出来事だった。
◇◆◇◆◇
「キミをこの大学から追放する」

























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