『きさらぎ駅』――
ネットで語り継がれる、異世界に繋がる駅の話です。
そこに迷い込んだ者は二度と戻れないと言われています。
私はまさかと思いましたが、この不気味な空気と異様な状況、
そしてあの老婆の姿が、その怪談を思い出させたのです。
携帯はまだ圏外のままです。
助けを求める方法がない以上、この駅で何か手がかりを見つけるしかありません。
私は駅舎に近づきました。
木製のベンチが一つだけ置かれ、錆びた看板が風に揺れています。
ホームには誰もいませんが、線路がどこかへ伸びているのが見えます。
時刻表もなければ、駅員の気配もないのです。ただ、静寂が耳に痛いほど響きます。
その時、遠くから低い音が聞こえてきました。
ゴトゴト……電車です。
私はホームに立ち、音のする方向を見ました。
一両編成の古びた電車が近づいてきます。
でも、車両には行き先が書かれていません。
不気味な予感がして、私は一歩後ずさりました。
電車がホームに止まり、ドアが開きました。中は真っ暗で、乗客の姿は見えません。
乗るべきか迷いましたが、本能が「これはダメだ」と告げていたのです。
私は息を殺してその電車を見送りました。
それから何時間か、似たような電車が何度もやってきました。
一時間おきくらいでしょうか。
どれも行き先がなく、ただ静かに止まっては去っていきます。
私はホームのベンチに座り、じっと耐えました。
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