奇々怪々 お知らせ

不思議体験

ジョーさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

トンネルの向こう
長編 2026/01/19 18:26 803view

空は薄暗いままで、朝も夜も分かりません。

時間の感覚が狂い始めていたのです。

どれだけ経ったでしょうか。

疲れと恐怖で意識が朦朧とする中、また電車が来ました。

今度は違いました。

車両の側面に「高瀬行き」と書かれています。

高瀬――私が旅を始めた町の名前です。希望が湧き、私は急いでその電車に飛び乗りました。

車内はがらんとしていて、他の乗客はいませんでしたが、

そんなことは気になりませんでした。

シートに座り、目を閉じると、電車が動き出しました。

次に目を開けた時、私は見慣れた駅のホームに立っていました。

高瀬駅です。

朝陽が昇り、遠くで車の音が聞こえます。

私は無事に帰ってきたのです。

携帯を見ると、日付が飛び、3年が経過していました。

現実では、私は行方不明者扱いになっていたのです。

家に戻ると、家族は涙ながらに私を迎えました。

母は老け込み、父は「遥」と何度も私の名前を呼びました。

でも、私はあのトンネルの中で怪我をした人たちのこと、

そしてあの老婆の不気味な姿が頭から離れません。

あの運転手や乗客たちはどうなったのでしょうか。

無事に助かったのでしょうか。

それとも、私のようにどこかへ迷い込んでしまったのでしょうか。

今でも、時折あの霧咲駅のことを夢に見ます。

あの静かな不気味さと、トンネルの暗闇が、私、佐藤遥の中で消えることはありません。

8/9
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