臭いのきつい履き古された靴、他人の汗が染みこんだ布団、背もたれのきしむオフィス用チェア、激安店で投げ売りされているトートバッグ。こうした代物が40フィートコンテナに隙間なく詰め込まれ、他国へと輸出されているのだ。
ではこうした中古品は、どのように調達されているのだろうか。
わたしが知っているのは次のようなケースである。田舎にはとても日本人が書いたとは思えないミミズの這いずったような筆跡で、二束三文の荒れ地に次のような看板が突き刺さっていたりする。「なんでも引き取ります、自由に置いていってください」。
いったいこの土地の持ち主はどんな人物なのだろうか。ゴミを無差別に処分してくれる慈善家なのだろうか?
察しのよい読者はすでにお気づきだろうが、おそらくこうした方法で回収された中古品が、回り回ってわたしたち通関業者の目の前に書類として顕現しているのだろう。USED FUTON, USED SHOES, USED TOYS, USED BAGS――。
こうした商売をパキスタン人、インド人、スリランカ人あたりが母国の需要を見越して手広くやっている。そのように理解していただきたい。
* * *
例の案件はかなり高めの見積もりを提示したにもかかわらず、結局受注できてしまった。
コンテナブッキングは荷主が自分で手配するそうで(送られてきたシッピング・インストラクションを見る限り、海上輸送を販売しているNVOCCもインド人経営のうさんくさそうな会社だった)、こちらは船会社から借りた空コンテナを作業現場まで運ぶドレイ手配と、作業完了後の通関業務の2点を請け負えばよいことになった。
中古品はノウハウがないと税関を通しづらい貨物であるが、わたしの会社は幸いその手のダーティな貨物に一日の長があった。
バンニング作業当日、外国人ヤードならではのトラブルがあるものと身構えていたけれども予想は裏切られ、空コンテナはスムーズに設置できた。
あとでドライバーにも聞いてみたのだが、現場ではどこの言葉とも知れぬ言語が怒鳴るような調子で飛び交っていたけれども、責任者らしき人物はコミュニケーションに過不足のない日本語を話したし、シャーシの誘導もそつなくこなす、非常に友好的な男だったそうだ。
空コン設置から3日後、バンニングは滞りなく終わったらしく、先方の担当者から実入りコンテナのピック依頼が入った。ドレイ会社へその旨を通知し、コンテナは無事にCYへ搬入された。
あとは荷主が送ってくる通関インヴォイスとバン詰め写真をもとに申告書類を作成し、税関から輸出許可をもらうフローが残っているだけだ。それが完了すればコンテナは本船に積み込まれ、カラチへ向けて出港する。
本船出港日の2日前、こちらから督促するまでもなく荷主から書類一式が送られてきた。アジア系外国人にしては驚くべき優秀さである(尋常の外国人ならカット日当日依頼がデフォルトだ)。
一部足りない情報や写真の不備こそあったものの、この手の外国人顧客ではスムーズにいくほうがむしろ稀だ。疑問点をメールのラリーで解決し、同日に申告までこぎつけた。
結果は区分3、税関による審査部門検査となった。輸出実績のない新規荷主は現物をチェックされる可能性が非常に高い。税関は裁判所とは異なり、〈疑わしきは罰する〉の倫理で運営されている。
ドレイ会社と再度打ち合わせて検査予約をこなし、検査指定票が発行される。それをドライバーへ渡し、新シール発行をCYオペレータに依頼し、ようやく検査当日となった。
検査には税関職員、通関業者の従業員が立ち会う決まりになっている。わたしは営業担当者として当然、立ち会う義務がある。指定時間に税関構内へ顔を出すと、すでにコンテナは先着していた。税関職員を内線電話で呼び、到着を待って封印用のシールを切断、扉を片方ずつ観音開きに開ける。
中身は写真通りであった。プレス機で圧縮したらしい布団の塊がぎっしりと詰まっている。ひとつでも布団を取り出してしまったが最後、残った貨物が隙間を埋めるように膨張してもとに戻すのは困難になりそうな様子だった。
海上運賃はBOX RATE――コンテナ1本につき何ドルという課金方法である。内部に1カートンだけぽつんと置いておくのと、隙間なくぎっしり詰めても値段は同じだ。おのずから、雑貨コンテナは目前のような状態になりがちだった。
雑貨コンテナは毎度こんな調子なので、税関の現物検査はなかば形骸化している。貨物確認ができるのはコンテナ手前に積まれているものだけで、奥になにが入っているかは荷主以外誰にもわからない。
もしそれを確認したいのなら、税関職員立ち合いのもとで全量デバンニング検査をするしかないが、さしもの税関もなんの嫌疑もない状態では、そこまで荷主に負担をかけることは道義的に許されない。〈検査が形骸化している〉というのはこうした意味なのだ。


























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