『ガシュインさま』というのは最近義父が見る妄想の人物だ。
深夜天井の辺りに小さく見えるようで、なんでも普段は山奥に住んでいるそうだ。
「お義父さん、そんな悲しいこと言わないで早く元気になってくださいよ」
私は義父の枕元に薬とお粥を置くと襖を閉じてリビングに戻った。
椅子に座るとテーブルの上にさっきの茶封筒がポツンとある。
なんの変哲もないどこにでもある茶封筒。
中には、紙が入っているみたいだ。
しっかりと封がしてあるのでハサミで切り、中から出す。
出てきたのは一枚の折り畳まれた白い便箋だ。
開いてみる。
紙の上の方に黒いインクで、ただこう書かれていた。
ホンジツ ウカガイマス
ミミズの這っているような弱々しい文字だ。
ところどころが滲んでいる。
─何これ?
─本日うかがいます……?
誰が?
心当たりがないから主人か娘の知り合いだろうか。
いやいや今どきこんな回りくどいことをしなくても、ラインやメールで充分に済むことだ。
じゃあ、いったいこれは?
誰かが家を間違えたんだろうか。
わけが分からなくなったので、とりあえず思考を停止して部屋の掃除や洗濯を始めた。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 2票























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。