仲が良かった頃、Pはそんなやるせない思いを俺に打ち明けてくれた。だが、彼を気の毒に思っても俺はただの友人の一人に過ぎないのだから、出来ることなど何もないのだ。
皆さんの中には、俺がすでにPと共依存に陥っていると考えられた人もいらっしゃるだろう。本音を言うと、【激情のあいつを部屋に入れないと本当にその場で殺される】と感じ、部屋に入れてしまったのだ。
(自分は脅しなんかに屈しない!)
安寧の暮らしの中でそう思っていても、いざ自分の身の安全が脅かされると、人間は簡単に挫けてしまうものだ。
また、Pと俺の口論をご近所さんに聞かれるわけにはいかなかったというのもある。実際に、俺のあの不吉なアパートの近くにも、何名か俺の営業所のご契約者様がお住まいになっていたのだから。
納得いかないと腹を立てるのはいいが、他の人やものに当たるのはただの乱暴であり反社会的行為だ。人間社会の中で普通に生きるには、アンガーコントロールを身につけることが大切だと思う。
とにかく、Pのような人と深く交流してはいけない。知らないで関わってしまったが最後、そいつの餌食にされるのがオチだ。
感情の起伏が激しすぎる人はとても外面がいいから、人は簡単に騙されてしまう。そして、心に魔を棲まわせている人と接点を持ってしまった時、そいつとの関係を断ち切るのが難しいから、この世は恐怖で満ち溢れているのだ。
あれから何十年も経っているのに、俺は未だにPに待ち伏せされる夢を見る。そして、やつは弾けるような笑顔を浮かべて、今なお俺を怖がらせるのだ。
【〇〇ちゃん(俺)、今どこに住んでるの?】
と。






















花蘇芳(沈丁花)です。【本当に恐ろしいのは(最終章)】と副題を設けましたが、短編はもう少し続きます。