ポケットのガラケーが震えました。
そこで完全に我に返り、
ごめん。バイバイ。
そう言って、エレベーターを待たず非常扉から飛び跳ねるように1階まで全速力で駆け下りました。
何度も足がもつれそうになりましたが、脇目を振らず身を乗り出すように、とにかく下へ下へと急ぎました。
幸い、後ろから追いかけられている気配はしませんでした。
外に立ててあった自転車に跨り、すぐに漕ぎ始めます。
ふと気になって、恐る恐る10階に目をやると、Aくんが片手に何やら細いコードのような物を持ち、ベランダからこちらに手を振っていました。
ごめんAくん、今日はすぐ帰るから…明日。
そう心の中で謝り、見えなくなる曲がり際の所で再度目をやると。
さっきとは打って変わって、女性と男性とAくんがベランダに並んでただこっちを見ていました。
まるで影が落ちているかのように、暗く、黒く佇んでいました。
よくよく目を凝らしてやっと表情や輪郭が辛うじて見えます。
彼らの周囲の空間が、水に溶かした砂糖のようにゆらゆら、ゆらゆらと揺れていました。
女性の方は見覚えがありました。
Aくんのお母さんです。
恐らくAくんを挟んで隣にいる男の人もお父さんだったと予測できました。
しかし、それはあまりにも奇妙な光景でした。
家族総出で、手も振らず、3人ともただじっと立って見つめているだけなのです。
それに、そもそも私は彼の父の姿を見ていません。


























なんだろう….
こわ
解説どこですか