そして電話は唐突に切れました。
肝心の退院日の話ができていません。
大叔母は少し違和感を覚えながらも、もう一度電話かけ直します。
今度はいつも通り娘さんが出ました。
娘さんも退院に喜び、退院日はすんなりと決まったそうです。
──
退院当日。
入院着から私服に着替えたお婆さんは普段よりずっと生き生きしてみえたそうです。
お孫さんに早く会いたい、そう笑顔で話していました。
大叔母が
「今日は旦那さんも迎えに来てくれるそうですよ」
と言った瞬間、お婆さんはほんの一瞬だけ驚いた顔をしたそうです。
「……主人がですか?」
と戸惑った表情。
でもすぐに笑って、
「……そうなの……あの人、私がいないと寂しがってだめなのよ」
と照れたように言ったそうです。
やがて娘さんが迎えにきて、お婆さんは笑顔で退院していきました。大叔母は迎えに行くといった旦那さんの姿が見えないことに少し違和感を覚えました。
──
退院して数日後。
娘さんから電話があったそうです。
退院したので、もう関係ないかもしれないが、お世話になったので一応連絡を、とのことでした。
「実は母が……亡くなりました」
退院した次の日夜、突然の心臓の発作だったそうです。
確かに病気はありましたが、薬を飲んで状態も安定していたのに……と大叔母も言葉を失ってしまったそうです。
娘さんは続けて言いました。
「実はちょうど……父の一回忌の日だったんです。
……父が、寂しがって連れて行ったのかもしれません」
本当に仲のいい夫婦でしたから……
涙ながらに呟く娘さんに、大叔母は言葉を失ったそうです。
そしてあの電話のことを言おうか迷って、でも結局、一言も言えなかった。
大叔母は気になって退院したそのお婆さんのカルテを確認したそうです。
当時はまだ紙のカルテでしたから、カルテのページをめくっていると、お婆さんの入院時の記録がありました。カルテには
“夫の死去をきっかけに、精神状態が悪化。自傷のおそれがあり、入院となる”
そう記述されていたそうです。


























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