と不思議そうな様子。こうして電話している途中でも、お爺さんはお孫さんの目の前で葬式の準備の確認で忙しそうにしているそうなのです。
そうこうしているうちに
「あっ……」
お孫さんが呟くと、
「今、いなくなりました。頭を下げて……消えました」
最後に、お孫さんは少し泣き笑いのような声で、
「……そういうことですよね。覚悟しておきます」
と言ったそうです。
翌日、家族が面会に来た後、お爺さんは具合が悪くなり数日後に亡くなったそうです。
家族に囲まれた穏やかで、静かな最期だったそうです。
──
大叔母から聞いた話。
大叔母は地元の精神科病院で定年まで勤めたベテラン看護師。
精神科と聞くと怖いイメージもあるかもしれませんが、大叔母が勤めていた病棟は退院に向けて落ち着いた生活を送っている方がほとんどで静かで穏やかな病棟だったそうです。
そこに、70代後半のお婆さんが入院していました。
うつ病と軽い認知症で、最初は泣いてばかりで、ご飯も食べられなかったらしいですが、次第に病状も落ち着いて、退院の準備が進んでいました。
退院先は娘さんの家。
お孫さんと暮らせるのを楽しみにしていたそうです。
退院日の確認のため、大叔母は娘さん宅に電話をしました。
数回の呼び出し音のあと、出たのは落ち着いた男性の声。
「もしもし、〇〇病院の看護師ですが……」
「ああ!家内がいつもお世話になっています」
その方は自分をお婆さんの夫だと名乗ったそうです。
退院の件を伝えると、不思議なことに旦那さんは急に言葉を失い黙りこんでしまったそうです。
しばらくの沈黙のあと、かすれた声でこう問いかけました。
「……私が迎えにいっても、いいんですか」
大叔母は、
(そりゃ家族なら来てもいいでしょう)
くらいの気持ちで明るく答えたそうです。
























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