始まりはいつだったか忘れたけど、すごく落ち込んでる日だったかな。
歩いて営業先向かってたらさ、急に後ろから肩を叩かれたんだよ。
トントンってさ。
でも、振り返ってもそれらしき人はいない。気のせいかなと思って、前を向き直すと、さっきはなかったのに、結構な量の鳥のフンが落ちてたんだよ。
あ、肩叩かれてなかったら頭に落ちてたわ、って思って。誰だかわからんけど、ありがとう!って感謝した。
その次も落ち込んでる日だったかな。
信号待ちしててさ。青になったから行こうと思って歩き出したら、また肩を叩かれた。
トントンって。
振り向いても誰もいない。
その代わり、今まさに渡ろうとしてた交差点を、ものすごいスピードでスポーツカーが走り抜けてった。
肩叩かれなかったら死んでたと思う。
そんなこんなで、俺のことを守ってくれる謎の存在がいるってことに気がついたんだな。
ある時は落ちてるガムに気づかせてくれたりしたし、
またある時はガキのいたずらでマンションから落ちてきた石を避けれたり。
とにかく、そいつは俺が死にかけたり、ちょっとした嫌なことを受ける前に、肩を叩いて教えてくれるんだよ。
でもな、さすがの俺でも、おかしい事に気がついた。
一見ありがたい存在に見えたけど、”頻度がおかしい”
信号無視の暴走車なんて、今どきそうそう見ないだろ?
週に3回くらいのペースで肩叩かれて、暴走車が横切る。みたいなことが起きてるし、上から石が落ちてくるなんて可愛いもんで、こないだなんて鉄骨落ちてきたぜ。ドラマとかアニメじゃねぇんだからさ。
いつしか、こいつのせいで死にかけてんじゃねぇの?って疑い始めたんだよな。
まあでも、肩叩かれるおかげで命拾いしてるのは確かだしな。あんまり疑うもんじゃないかも。とも思ってて。でもさすがに怖いよ。こんなに命に関わる偶然が連発してたら。
まあ複雑な心境ではあったんだけど、とりあえず放置してたんだよな。まだ生きてるし。
んで、あれは土曜日だったかなあ。久々に飲み行きたくなっちゃってさ。電車で繁華街の方まで行こうと思って、駅に行ったんだよ。
駅のホームで電車待ってたら、
通過する電車が来る時の、「電車が通過しますー」ってアナウンスが鳴って、その瞬間さ。
トントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントントン
ってものすごい勢いで肩叩かれて。
身体が強ばって、何が来るのか身構えちまった。
























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