私の大学時代の話です。
当時、私は芸術系の大学でデザインを学んでいました。4年間の学生生活でかなり仲良くなった友人がいまして、仮に彼女をSさんとします。
Sさんと私は同郷で、好きなアーティストも共通していたため、大学2年生になった頃から徐々に行動を共にすることが多くなりました。
卒業を控えた4年生の冬、私たちは毎日のように学校の作業室にこもって卒業制作に取り組んでいました。
昼間には多くの学生がそこで作業していましたが、隙間風の入る古びた作業室に夜遅くまで残っていたのは、私とSさんくらいでした。
二人きりになると、私たちは決まって映画や動画を作業BGMの代わりに流しました。私は刑事ドラマ、Sさんはホラー映画やホラーゲームの実況動画を好んでいたことを覚えています。
互いにおすすめの動画を見せ合う。多忙な中での小さな楽しみでした。
ある日、私が某配信サービスで見つけた古い刑事ドラマを二人で鑑賞していました。主人公の刑事が事件に遭遇して、被害者がダイイングメッセージを残して、それをもとに捜査をする。
お手本のような刑事ドラマだと思いました。
そのドラマに、被害者男性の運転免許証がアップになるシーンがありました。
何となく目に引くものがあって、一時停止ボタンを押しました。
『〇〇県××市△△町』
免許証の住所の欄に私たちの地元が記載されていました。Sさんに限って言えば、実家の住所と△△町まで一致していたそうで、私たちは大層盛り上がりました。
こういう偶然はたまにあることで、学生にとってはこんなことでも1ヶ月は話のネタになるのです。
それから3日後。
今度はSさんおすすめの怪談動画を二人で見ていました。見ていたと言っても、私はジャンプスケアが苦手、Sさんは卒業制作に集中していたので、二人ともまともに画面を見ず、音声に耳を傾けていました。
すると画面から機械音声で、
『Sさん、Sさんですよね。』
『違います。』
『Sさんでしょう!?Sさんですよね!!!』
『何なんですか?警察呼びますよ!』
という会話が聞こえてきました。
主人公が街中で突然見知らぬ男に話しかけられ、知らない名前で呼ばれるという内容の怪談だったと思います。そこで呼ばれたのがSさんの苗字だったので、私たちはびっくりして顔を見合わせました。
Sさんの苗字は特段珍しいものではなく、話の流れとしてもそこでSという苗字が出てくることに違和感はない。つまり、偶然の一致として片付けられる範疇の出来事だったということです。
ただ、流していたのが怪談だったということもあって私は肌寒さを感じました。
「次さ、芸人さんのラジオ流していい?最近面白い人を見つけて。」
自分の名前が呼ばれたSさんは、私以上に怖い思いをしたのでしょう。怪談動画が終わった途端、愉快なお笑いラジオを流すことを提案してきました。私もそれに同意して、その日は最後までお笑いの動画を見ました。
その次の日。
この日のことを私は一生忘れることはないと思います。

























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