これは高層マンションに住んでいた頃の話だ。
俺は14階に住んでいたため、夜遅く帰宅するときでもエレベーターは欠かせなかった。
その頃は仕事が忙しく、毎日終電での帰宅が当たり前。
その日も、いつも通り終電で帰宅した深夜のこと。
エレベーターに乗り、14階を押してドアが閉まり──
ぐぅん……と上昇が始まった瞬間、勝手に8階のランプが点いた。
「誰か乗ってくるのか…?」
そう思いかけて、俺はゾッとして固まった。
──8階は、誰も住んでいないよな。
つい先週、自殺騒ぎがあって、
住人はいなくなり、封鎖されているフロア。
なのに、エレベーターは淡々と8階へ向けて上がっていく。
咄嗟に、2・3・4・5階のボタンを無我夢中で連打した。
エレベーターは2階、3階と過ぎて──
4階で止まった。
開ききる前に外へ飛び出して、階段を駆け降り、
近くのコンビニで朝まで震えながら立ち読みしていた。
明け方、戻る頃には夜の出来事は気のせいだと
自分に言い聞かせたが、どうも違和感が消えなかったから、それ以来階段を使うようになった。
────数日後。
珍しく仕事が早く終わり、翌日も休みだったので
友人を招いて宅飲みすることに。
「14階まで歩かせるのもな…」
そう思い、仕方なくエレベーターを使うことにした。
やっぱり、8階で止まった。
でもその時は不思議とそこまで怖くなかった。
友人が一緒だったからかもしれない。
部屋に入って、ビールを開けて、宅飲みを始めた。お互いの近況やくだらない話をして、流れでエレベーターの話になり、
「ここのエレベーター8階でよく止まるんよ、まあ俺の思い過ごしだと思うけど、万が一ってこともあるしなーww」
なんて笑いながら話した後、友人が神妙な顔をしながら言った。























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。