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妖怪・風習・伝奇

kkさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

山で遭難して出会った木こりの話
長編 2025/11/06 23:01 22,877view
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風が木々をざわめかせ、遠くで何かがガサッと動いた気配に、思わず亮介と目を合わせた。
笑いながら来たはずなのに、背筋がぞっとする。

「……マジで迷ったかもな」
「いや、まだ大丈夫だろ」

そんなやり取りをしながらも、胸の奥にざわつく不安を感じていた。

不安が増す中、俺はポケットから携帯を取り出して電波を確認した。

「……圏外かよ」

亮介も同じように携帯を取り出すが、画面には赤い×印しか出ない。
笑いながら来たはずなのに、今の俺たちには笑いの余裕なんてなかった。

「やべぇな……どうすんだ、これ」

「まあ、ちょっと進んでみるか……」

そう言いながらも、足は自然に止まることが増え、暗闇の奥へ進むたびに、胸の鼓動が速くなる。
森の中の静寂が、妙に重く、耳の奥でじわじわと不安を煽る。

気づけば、どこをどう歩いてきたのか、まったく分からなくなっていた。

「……おい、さっきこの倒木、通ったか?」
「いや、覚えてねぇ……てか、同じとこぐるぐるしてね?」

亮介の声にも焦りが滲む。
懐中電灯の光が頼りない円を描き、木々の間をさまよう。
木の幹には何も目印がなく、道らしい道も見当たらない。

「おかしいな、登山道のはずだろ……?」

俺たちが立ち止まると、風ひとつ吹かない森が、まるで息を潜めるように静まり返った。
自分たちの呼吸と、湿った土を踏みしめる音だけがやけに大きく響く。

その瞬間――

どこからか、「カサ……」と草を踏むような音がした。

「……今の、聞こえたか?」

思わず亮介の袖をつかむ。
「お、おう……。まさか、熊とかじゃねぇよな……?」

冗談めかして笑おうとするが、喉が乾いて声がかすれる。
頭の中でニュースの映像がよぎる。
“登山客、熊に襲われ重傷”――そんなテロップ。

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