そう言うと配達員はしばらくがっくり首を項垂れると、またすぐ明るい顔に戻り「ご協力ありがとうございます」と言って頭を下げると朱実に背を向け、渡り廊下を歩きだした。
朱実は遠ざかる配達員の背中に声をかける。
「すみません」
配達員が足を止め、肩越しに振り返った。
「あの、、、
これからあの配達員が来たら、どうしたらいいんですか?」
若い配達員はしばらく俯いていたが顔を上げ、ボソリと呟く。
「もし良かったら、これまで通り荷物受け取ってくださいませんか?
それがあの人への何よりの供養になると思うので、、、」
朱実が配達員の言葉にコクりと頷くと彼は「ご協力ありがとうございます」と言い、
また前を向いて歩きだした。
その後も朱実のアパートには『小嶋さん』が配達に来ることがあったのだが、
ある日彼女がドア越しに「いつもありがとうございます。本当に助かってます」と声掛けした後は、ピタリと来なくなったという。
【了】
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