「機関誌」を新規購読しに来た老人

「そういや、「機関紙」配達のアルバイトでこんな事があったな・・・」
鷲尾シンが「機関紙」の販売店であった怖い話を始めた。販売店の店舗は古びたプレハブ小屋であった。ある日、シンは週2で発刊される「機関紙」の配達を終えると、他のアルバイトの配達員が戻るまで平井和正のウルフガイシリーズの第一作「狼の紋章」を読んで時間をつぶしていた。シンは心の中で
「早く仕事を終わらせて、家に帰って、YouTubeで公開されている信中上さんの動画「幻想鮮血想」でも見るか・・・。あーゆープロの殺し屋が主人公の復讐譚は面白いんだよなぁ。まるで大藪春彦の「傭兵たちの挽歌」やA・J・クィネルの「燃える男」なテイストだよ。ちょっと現実味がない所があるけどさ(主人公の妹や親友を殺したターゲットが吸血鬼、雪女、死神とか・・・)」
と思っていた。販売店のラジオからニューウェイヴバンド、バグルスのヒット曲「Video Killed the Radio Star」が流れていた。余談ではあるが「Video Killed the Radio Star」はファンタジーアクション「ハイランダー」シリーズやイノシシ映画「レイザーバック」、バイオハザードシリーズ史上、どー見てもマッドマックスだろ！とファンを唖然させた「バイオハザードⅢ」で有名な映画監督ラッセル・マルケイによるミュージックビデオはMTVで最初に放送されたことで有名だ。シンはふと外を眺める、外は曇り空であった。

トントン

誰かが販売店のドアを叩く。シンは「狼の紋章」を読むのを中断して
「誰かが戻ったのか？」

とドアを開ける。そこには老人が立っていた。老人は
「ここ「機関紙」の販売店かね？」
「そうだけど・・・」
「実は「機関紙」を購読を希望したいんですが・・・」
「ええ！ありがとうございます！今から契約書を持ってきます！」
シンは新規の顧客である老人の前に購読の手続きの書類を渡す。老人は書類にサインし、自身の印鑑を押す。老人は
「後、これは代金です。確認してみて下され」

老人は封筒をシンに渡す。シンは封筒の中身を確認する。封筒の中には購読代、15000円そっくりそのまま入っていた。そして
「分かりました。来月から「機関紙」をそちらに配達しますのでよろしくお願いします」
とお辞儀する。老人は
「ヨロシク、頼むよ。ああ、それと外に止めてあったホンダ・MBX125Fはキミのかね？今の若者はあんなのが好きなのか？わしゃ、バイクはあんま好きじゃないだけどな」
と言って、販売店から出た。そして、老人と入れ違いで「機関紙」の販売店を経営しているソニカが入ってきた。ソニカはバイクの免許取り立てだった時にシンに
「アンタ。スーパーカブを買うつもり？しょぼくれたオジンが乗っている古臭いスーパーカブなんかよりMBX125Fの方がナウいし、性能が良いよ」
とホンダ・MBX125Fを薦めてくれた人だ。ちなみに彼女のオートバイはスズキ・GSX400Xインパルスである。シンは休日の時に彼女に誘われて、いろんな所をツーリングすることが多かった。以前、シンは運転の練習を兼ねて、彼女と湖があるところまで行った事があった。その時、彼女はピチピチのライダースーツを脱ぎ、全裸の状態で水浴びをする。当時、チェリーボーイだったシンは思わず目を背けたという(ちなみに霖くんはチェリーボーイでなく「童貞守るマン」である)。そして、水浴びを終えた彼女はシンを無理やり押し倒す・・・。この話を聞いて、私はなんとなく、昔、ビデオで見たアラン・ドロン主演のバイク映画「あの胸にもういちど」のマリアンヌ・フェイスフル(ローリング・ストーンズのミック・ジャガーと付き合っていた女性でもある)を思い出した。「あの胸にもういちど」はアニメ「ルパン三世」の峰不二子にも影響を与えたとされている。また、「あの胸にもういちど」をモチーフにした短編アニメ「誘拐アンナ」というのも存在する。ちなみにバイク映画に関しての「あるジンクス」と言うものが存在する。それは「イージーライダー」といい「クライド・イン・ブルー」といい、ほとんどの結末はbadendで終わることが多いということである。ちなみに草刈正雄主演の「バイク乗りの聖書」と呼ばれる角川映画「汚れた英雄」はバイク映画ではなくバイクレース映画である(補足だが原作だと主人公の北野晶夫は2輪レーサーから4輪レーサーとして転向したが、最後はル・マン24時間レースで・・・というオチであった)。多くの者たちの中(潜在意識)では

バイク＝「危険」もしくは「死」