咲子はその空気に戦慄を覚えた。
夜、仏壇に手を合わせながら、佳代の数珠を握りしめる。
心美は眠っていた。隼人は静かに本を読んでいた。
隼人は、あのときの出来事をどうやら覚えていないらしい。
部屋に戻れと言われた隼人は、急な眠気に襲われ
ふらふらと、リビングのソファーに倒れこんで眠ってしまった
という。
──私も、家族も、お義母さんに守られた。
涙があふれて止まらなかった。
そのとき咲子は、静かに、胸の中で誓った。
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翌年の夏。
「ろうそくだせ〜、ださないとかっちゃくぞ〜」
外では、子供たちの歌声が響いていた。
隼人は、友達と一緒に町を回っている。
心美は、一歳になった。
咲子は、玄関に灯された小さな提灯を見ながら
静かにその時を待っていた。
──ピンポーン。
チャイムが鳴る。
懐中電灯を持ち、ゆっくりと玄関を開ける。
そこにいたのは──白い着物に、ぼんやりとした顔。
どこか懐かしい気配がする。
咲子は静かに問いかけた。
「……お義母さん、私の声は聞こえてますよね?」
白い影が、微かに揺れる。
咲子は、ひとつ息を吐いて、続けた。
「三軒隣の○○さんの家に……子供が、生まれました」
その言葉に、白い影はふっと頷くように消えていった。
夜風が吹き、提灯の炎が揺れる。
心美が5歳になるまで、あと4年、それまでツヅラサキは
現れ続ける。
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