答えるべきか。いや、答えたらどうなるか分からない。逃げたいが、恐怖で足が地面に張り付いたように動かない。
もう、どうにでもなれ。俺はヤケクソにスマホを取り出し、画面に映った「鼃醫鸕鷃瘀龢驥鸜懸蠱」の文字を、何かに突きつけるように見せた。
「お前のことなんて、知らねえ!!」
思わず声が震え、荒々しく叫ぶ。
「……お前は、分からないんだろ? だから……お前は分からない存在なんだ!」
すると、あの濁った透明の塊は、まるで俺の発言に反応したかのように揺れた。
風に揺れる布のように、輪郭が波打ち、微かに膨らんでは縮む。
「……まさか、俺の言葉を理解したのか?」
足が震え、心臓が喉まで上がる。
だが、答えは返ってこない。ただ、存在の気配だけが、わずかにこちらを撫でるように動いた。
そして、何かはまるで息を止めたかのように、一瞬で消えた。
濁った透明の塊は、跡形もなく消え、辺りには何も残らなかった。
俺は呆然と立ち尽くしたが、消えたという事実が頭に入ると、安堵の波が押し寄せてきた。
恐怖と緊張で張り詰めていた体が一気に緩み、思わず地面に座り込む。
息が荒く、膝を抱え、心臓の鼓動がようやく少し落ち着くのを感じた。
その後、何事もなく自宅に帰り着いた。
あの濁った透明の何か鼃醫鸕鷃瘀龢驥鸜懸蠱についてレポートを書こうと机に向かうが、どこか心の奥で「やめておけ」という声がざわつく。どこか心の奥で、触れてはいけないと止められているような感覚があった。
仕方なく、俺はネットや図書館で調べた別の伝承を材料にしてレポートを書き上げた。
提出は済ませたが、頭の片隅には、あの存在の気配と、消えたときの揺らぎが、まだくっきりと残っていた。
レポートを書き終えた後も、俺はあの鼃醫鸕鷃瘀龢驥鸜懸蠱という存在を忘れることはなかった。
そりゃあ、あんな体験をしたのだから当然だ。
心の奥底には、あの濁った透明の何かは一体何なのか、知りたいという衝動がくすぶっていた。恐怖と好奇心が入り混じるその感情は、無理に押さえ込もうとしても、まるで小石が水面に落ちたときの波紋のように、静かに、しかし確実に広がっていった。
それから数年間、大学の休みの日を利用して、あの村に通い、鼃醫鸕鷃瘀龢驥鸜懸蠱について調べ続けた。大学を卒業してからも、休みの日や空いた時間を見つけては調査を続けた。
しかし、あの日以降、あの濁った透明の何かは、二度と俺の前に姿を現さなかった。
この話をこのサイトで公開したのは、何か情報提供を求めるためだ。誰か、鼃醫鸕鷃瘀龢驥鸜懸蠱の正体を調べてほしい。
俺は、あれが何なのか分からない限り、この不安と疑問から逃れることはできない。
そして、もしかするとあの何かは、今もどこかで、この世を見つめているのかもしれない。
誰か教えてくれ。
我は誰なのか。
























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