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心霊

556さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ねえ。私、綺麗になったでしょ?
長編 2025/08/28 08:06 6,419view
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次の瞬間、

キキキーーー!!!

道路に飛び出したAの目前で一台の車が急停車した。

ププーーー!!

と怒りのクラクションに身をすくめ、Aが呆然となっていると、運転席の窓から一人の男が顔を出した。

「あれ? A? Aじゃないの?」

「あ・・・」

彼は、Aの同級生のBだった。
中学高校と一緒で、地元にいた頃は比較的よく遊ぶような仲だった。

Aは慌ててBの車に走り寄り、「頼む!ちょっと家まで乗せてって!」
「なんだよいきなり。つーかA,いつ帰って来てたんだよ」
「車で話すから、ちょっととりあえず乗せて!」

無理やりBの車に乗り込んだAは、数週間前に地元に戻っていたこと、大見得切って出て行った手前、気まずくてみんなに連絡できないでいたこと、などを手短に話すと、今あった話をしようと身を乗り出した。

「でさ、俺明日使う履歴書の写真を撮りに、さっきCスーパーに行ってきたんだけどさ。あそこもいつの間にか閉店しちゃってたんだな。そこでさ――」
女の話をしようとしたAの言葉を、Bが遮った。
「なんだお前、知らなかったの? え? じゃあお前、あのCのことも知らないの?」
「Cのこと?」
Cとはそのスーパーが実家だった、二人の同級生だ。AはそれほどCとは親しくなかったが、風のうわさで、彼が奥さんと二人でCスーパーを継いで経営していると聞いていた。

Bはやや声をひそめてつづけた。
「いや、Cのことなんだけど、あいつ、嫁さんと小さな子供と一緒にあのスーパーの二階で暮らしてたんだけどさ、不倫しちゃってさ」
「不倫・・」
確かに記憶の中のCは女にだらしない奴だった。

「そうそう。そんでその相手が、同じクラスだったDだったんだよ」
「え?あのD?だってあいつ・・」
Dは二人の同級生だった女子で、Aは高校卒業以来Dとは会ってもいなかった。高校時代のDは決して綺麗なほうではなく、どちらかと言うと冴えない根暗なイメージだった。
「そう、その根暗だったDと同窓会で再会した時、Cのやつ、酔っぱらって面白半分で口説いたらしいんだよ。そりゃDは口説かれたのなんて人生初だろうからだいぶ舞い上がっちまったらしくてさ。何度かやったらしいんだけど、Cはそれで関係切ろうとしたら、Dが本気になっちゃったらしくてさ」

「ああ、・・ありがちで最悪なやつじゃん」
「そうなんだよ。で、CはDとの関係が奥さんにもばれてもう修羅場。離婚だなんだって話になったらしいんだけど、Cが奥さんに謝りまくって、Dとの関係も全て切ることを約束してなんとか許してもらったんだと」
「へえ・・」
「そんでそのとき、結構CはひどいことDに言ったらしいんだよな。お前みたいなブス本気で相手にするわけねえだろとか、二度とその不細工な顔見せるなとか。まあ、噂だけど」
「ひでえな」
「・・・で。マジヤバいのがここからで、Dはそれがきっかけでうつ病になって、家から出られなくなっちまって。Cはその間も平気な顔してあそこでスーパー経営してたんだけど。何年かしてある時、Dが突然家を飛び出してCのスーパーに行ったんだけど。その時のDは、真っ赤なドレスを着て、めっちゃ化粧して、かなり異様な姿だったんだと」
「真っ赤なドレス・・・」
Aはぞっと鳥肌が立つのを感じた。
「で、Dはその姿でスーパーの中にどんどん入って行って、スタッフルームまでどんどん入って行って、Cを見つけると駆け寄ってって言ったんだと。『私、綺麗になったでしょ?』って。で、その場でガソリン頭からかぶって焼身自殺」
「・・・・・嘘だろ」
Aはものすごい悪寒に襲われた。
「マジだよ。当時新聞にも載った事件だぜ。結局それが原因でスーパーは廃業。ついでにCは奥さんと子供にも逃げられ、今はどこでなにをしてんのか、俺も知らんのよ」
ガタガタ震え出したAを見て、Bが首を傾げた。
「どうした?寒い?そういえばさっきそのスーパーが何かって言おうとしてたよな?」

4/5
コメント(1)
  • 伊集院の怖い話によく似てるなあ

    2025/08/29/15:30

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