嗅いだことのない臭い。女物の香水をうんと濃くしたようなどぎついやつ。むせてしまうほど濃い臭い。
Aは目を開けそうになるのを堪えた。今開けたら絶対に何か見えてしまう。それは分かっていたので、絶対に開けるもんかと、強烈な臭気に耐えていた。
しばらく経っても香水の臭いは全然消えずに、まるですぐ目の前に香水をつけた誰かがいるようだった。
恐ろしくて逃げ出したいが体は動かない。Aは懸命に目を閉じたまま耐え続けた。
すると・・
ぽたり。
突然、顔に何かが垂れてきた。
ぽた、ぽた。
水? まるで水滴のように冷たい何かが顔に降りかかってくる。
ぽた、ぽた、ぽた、ぽた・・・・
徐々に間隔が短くなってくる。
と同時に香水のような臭気が一層濃くなってくるのを感じる。
ぽた、ぽた、ぽた、ぽた、ぽたぽたぽた・・・
たまらずにAは目を開けてしまった。
するとすぐ目の前に女の顔があった。
天井から逆さまに女が飛び出していた。にやにやと不気味に笑う女の顔。女の長い髪が垂れさがり、その髪から滴がAの顔に降りかかっていた。髪の毛はびしょ濡れで、その髪の毛から強烈なあの臭いが。
Aは声にならない悲鳴を上げ、意識を失った。
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