この男が消えるシーンも写真の中に閉じ込められたシーンも低予算映画のチープな合成っぽさは全くなく、むしろ現実に溶け込むように自然な演出だった。
女は男を写真から出そうと、カメラを購入した骨董品店を探すが、いくら探しても店がなく途方に暮れる。
結局、女は写真から男を出す方法を探すのを諦め、男の写真を肌身離さず持ち歩くようになり、新しい日常へと戻っていく。
個人的には彼らの今後に想像の余地を残す良い終わり方だと思った。
なんとも言えないじんわりと嫌な気持ちになる
映画の系列だ。
演技はリアルだったし、演出もあまりにも自然。
まるで現実の延長線上にあるかのようだった。
シアターを出て受付の前を通る。
「ご来館いただきありがとうございました。」
その声で染み込むような嫌な気持ちが少し浄化された。
軽く会釈をしてミニシアターを出る。
むわっとした蒸し暑さが肌にまとわりつく。
ピンク色のスナックの看板が煌々と光る。
想定していたよりも良い映画が見れて満足していた。
駅に向かって歩く足取りも軽い。
視界の端を居酒屋の赤提灯が掠める。
映画の余韻と受付の美しい女性を肴に一杯飲んで帰ろうか。
非現実的な美しさの女性を思い出す。
また、来ようと思った。
それから何回かミニシアターへ足を運んだ。
上映される映画はどれも現実に溶け込むような不気味さで後味が悪いものが多かった。
作風が似ているのは同じ人が作っているからだろうか?
このミニシアターのために。
毎回私しか客がいないのも少し気になる。
このテナントや設備費もただではないはずだ。
大富豪が趣味で運営しているとしか思えない。
常連だと認識されたのか、受付の女性とも二言三言会話をするようになった。
どうも元々彼女はたまたま見つけたこのミニシアターに通う常連客だったようだ。
前任受付の離職を機に、オーナーから後任の受付として働くように言われたとのことだ。
このミニシアターで彼女以外の人間に会ったことがない。
一人でシネマを回しているのだとしたら相当な重労働ではないだろうか?
彼女についてはまだこれしか聞き出せていない。
彼女から私のことを聞いてくること一度もない。
まだ、お客さんとして一線引かれているか、控えめで奥ゆかしいのか。
後者であることを期待したい。
ただ、彼女も映画が好きだと知ることができた。
その時、私は心の中でガッツポーズをしていた。
なぜ映画が好きなのかを聞いたとき、
「一本のフィルムは人そのもの。それを鑑賞することで理解し合えるのでございます。」
と答えた。
とても情熱的で誠実な鑑賞姿勢だと私は思った。
もっと彼女のことが知りたい。
いつしかそう思うようになっていた。
























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