21時まであと15分程だ。
シアターに入る。
シアター内は濃いグレーの絨毯に赤い座席が40席ほど配置されていた。
思っていたよりも大きい。
上映前のため薄暗い照明が灯っていた。
せっかくの貸切なので、中央から一列後方の席に腰掛ける。
シアターを貸切なんて機会は滅多にない。
どんなマイナー映画でも映画マニアが数人見にきているものだ。
贅沢な体験できて素直に嬉しい。
銀幕にはまだメインカーテンが掛かっている。
「上映を開始いたします。ご着席のうえお待ち下さい。」
静かな声でアナウンスされ、照明が消える。
メインカーテンがゆっくりと左右に開き、スクリーンがあらわになる。
映写機がカラカラと回り始める。
スクリーンでカウントダウンが始まる。
どんな映画でも始まる前は期待感で手に力が入る。
カウントダウンが終わると唐突に映画が始まった。
配給会社がないのか・・・?
個人製作なのだろうか?
映画の内容は個人的にはアタリだった。
前半は若いカップルの馴れ初めから付き合うまでの恋愛映画だった。
中盤になると男が浮気をして、それを女が察知する。
女は男に自分だけを見てほしいと願った。
この時点ではよくある設定で面白いとは思えなかった。
ただ、演技がリアルすぎて、まるで人の人生を覗き見ているようで不気味だった。
そんな女はある日、不思議な雰囲気の骨董品店を訪れる。
店主は女の悩みを見透かし、一つの商品を勧める。
それは古びたポラロイドカメラだった。
そのカメラで男を撮影すれば、あなただけを見てくれると言う。
女はカメラを購入し男を撮影する。
男は空気に滲むように溶けて、ポラロイドカメラから現像された写真に閉じ込められてしまった。
























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