子供のころ風邪をひいて寝込んでいた時の話です。
夜中にふと目を覚ますと、自分の体が動きません。
ああ、また金縛りか……とうんざりしつつ、私は気にしないで眠ることにしました。
というのも子供の頃の私はちょくちょく金縛りにあっていたのです。
具合の悪い時や疲れている時は特に多く、心霊体験というより、体の不調が原因なのだと子供ながらに納得していました。
金縛りにあうと、目を閉じていても何故か周囲の景色が分かるという人がいますが、私の場合は視界は真っ暗で、音や感触だけがはっきりしています。
うとうとしていると何か物音が聞こえた気がしました。
ずり……ずり……というなにかが擦れるような音。
気にしないで眠ってしまおうと思えば思うほど、音にますます敏感になっていきます。
ずり……ずり……と音が近づくにつれて、誰かが畳の上を移動する音なのだとはっきり分かりました。
気配がすぐ傍まで近づき、息遣いが聞こえる程近くで、誰かが私の顔を見つめているのが分かります。
恐怖をこらえて、ぎゅっと目をつむっていると、冷たい感触が額に触れました。
誰かが熱のある私の額に、手を当てているのです。
ひんやりとした華奢な女性の手です。
なんとなく、お母さんの手だ……と思いました。自分の本当の母という意味ではなく、優しい手つきがどこか“母”を思い出させました。
その手は私を、ただ優しく撫でてくれました。熱のあった私は、冷たい手が心地よく、そのまま眠りについてしまいました。
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その幽霊は、度々眠っている私のもとに現れました。
特になにか怖いことをしてくるわけでもなく、ただ私を優しく撫でてくるだけの幽霊。
金縛りにあうのは嫌だったけど、彼女が悪い幽霊でないことは、優しい手から分かりました。
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1年程経った頃でしょうか。
その日も夜中にふと目を覚ますと、金縛りになっていることに気付きました。
足元に誰かの気配があります。
ずり……ずり……と畳 を少し滑るように移動する音、彼女だとすぐに分かりました。
彼女はいつものように私の顔を優しく撫でてきます。
























少し悲しい切ない感じ