これは、僕が学生時代に実際に体験した話です。
当時、僕は音楽の専門学校に通っていて、よく先輩の家に遊びに行っては、一緒に曲を作ったりして過ごしていました。
ある夜、先輩がこう言いました。
「この近くに心霊スポットがあるけど、行ってみる?」
その言葉に、僕は興味津々。
続けて、
「ちょっとヤバい場所と、かなりヤバい場所、どっちがいい?」
と聞かれ、僕は迷わず「かなりヤバい方で」と即答しました。
当時は心霊や霊の存在なんて信じておらず、完全に“アンチ幽霊派”だったんです。
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連れて行かれたのは、住宅街の端にあるT字路。
その突き当たりに、木々が生い茂る小さな林がありました。
林に入る道はカーブしていて奥が見えず、まるで異世界の入口のよう。
先輩はその手前で立ち止まり、言いました。
「ここ、本当にヤバいやつがいる。行くなら一人で。」
怖さはありましたが、僕は入口から少しだけ中を覗いてみることにしました。
砂利道で少し傾斜があり、奥はやはりよく見えない。
「何もないじゃないですかー」と先輩に声をかけて振り返ったその瞬間、視界にそれが入りました。
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カーブの奥から、黒い人影が歩いてくる。
右手と右足、左手と左足を同時に動かして。
人間の歩き方ではありませんでした。
しかもその影は、T字路にあったカーブミラーほどの大きさ。明らかに異常でした。
「これはマズい」と本能で悟った僕は、T字路の方に全力で走り出しました。
すると、なぜか先輩も同時に走り出していました。
しばらく走ってから後ろを振り返ると、もう影の姿はありませんでした。
「先輩、あれ……何だったんですか?」
「だから言っただろ。ヤバいやつがいるって」
その後の言葉に、僕は返す言葉がありませんでした。
























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