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安心して先輩の家へ向かって歩いている途中、先輩がふと僕の後ろを見て、こう言いました。
「……お前、何かつけてない?」
次の瞬間、腰に激痛が走りました。
まるで刃物で刺されて、グリグリと捻られているような痛み。
「痛い痛い痛い、なんですかこれ!?」と叫ぶと、先輩がこう言いました。
「さっきの場所から、着物の帯みたいなものが、お前の腰に繋がってる。」
それは、まるで“印”のようなものだったらしい。
実はこの先輩、気功や簡単な除霊ができる人で、その場ですぐに処置してくれて、なんとか無事に帰宅できました。
……と思っていました。
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しかし、本当に怖かったのはここからでした。
当時、僕は二階建ての実家で暮らしていたのですが、その日を境に、怪現象が続くようになったのです。
・誰もいないはずの階段を登ったり降りたりする足音
・自室のフローリングを裸足で“ペタペタ”と歩く音
・寝ていると、誰かに足首を掴まれる感覚
そしてお風呂の鏡。
正面の鏡の右上に手形があり、それがどうやっても落ちない。
何度拭いても、洗っても、しぶとく残っている。
よく見ると、その手形の指は異常に長く、人間のものとは思えませんでした。
怖くなってその写真を撮り、先輩に送ったところ、すぐに返信が来ました。
「それ、鏡の“向こう側”からつけられてるから、消えないよ」
そう言われて、全身の血の気が引きました。
どうやら“何か”が、こちらに気づいてアピールしてきていたようです。
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さらに後から先輩に聞かされた話。
実は僕、あの心霊スポットから帰った後も、何度も「また行きましょうよ」と誘っていたらしいんです。
でも僕には、その記憶がまったくなかった。
そしてあの帯のようなものの正体は――
「“私のものだ”というマーキングだったんだよ」
「あの場所の近くに行くたびに、無意識のうちに呼ばれてたんだと思う」


























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