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不思議体験

たちさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

誘われて
長編 2025/08/02 23:45 3,448view

しばらくして、物音が聞こえ、目を覚ました。
雨音は聞こえず、何やら外から話し声や人の足音などがした。
窓から顔を出し、外を見て、私は固まってしまった。
外には、まるで小さな村のような光景が広がっていた。
自宅と思われる古屋、畑仕事をしている高齢の夫婦、まるで昭和の時代の生活風景にただ驚いた。外を歩いている村人らしき1人がこちらを見たような気がしたので思わず顔を隠した。
「夢だ!そう、夢!」そう自分に言い聞かせるしかなかった。その間、すごい量の汗が体中から出ていた。
無理矢理、眠ろうとして、目を閉じていた。
しばらくすると、眠りに落ち、再び目を覚ました。
古屋の中の様子に変わりはない。しかし、古屋の隅にもう1人の気配を感じた。恐る恐る目をやると、そこには私より年上の男性が窓から少しだけ顔を出し、外の景色を眺めていた。
「うわー!」
私は思わず、叫んでしまった。
「しー!静かに!」
その男性はそう伝えてきた。
何が起きているのかわからず、パニックになっていると、

「外には出ない方がいいよ。ほら」
と外を指差した。
息を荒くしながらそっと外を見ると、そこには村人と思われる人達がこちらをずっと見ている。
「は?さっきの夢じゃないのか?今も夢?っていうか、あの人誰だよ。外の人達はなんでこっち睨んでるんだよ。」
何も理解できず、へたりこんでしまった。

コン、コン

ドアを叩く音がし、
「おーい、ドアを開けてくれんか?大丈夫かい?」
と老人であろう声が聞こえてきた。
その優しそうな声に安心し、すぐにでも古屋から出ようとした。
「待て!」
古屋を出ようとした私の服を掴み、私は後ろに投げ飛ばされた。
「何すんだ!外に出させろよ!」
「出たら連れてかれるぞ。それでも、いいのか。」静かに男性は私に言った。

「どこに?」
「………」男性は無言のまま、床に座り、目を閉じた。
「あのー?大丈夫ですかー?」
「早く、出てきなー」
女性の声や、子供の声もしている。
ドアの方を見て、少し違和感を感じた。
「ここに入った時、鍵掛かってなかったよな。外から開けて入ってきたらいいのに。」
そう思いながら、立ち上がり、ドアに近づいた。座っていた男性は目を開け、こちらを見ている。
ドアに手をかけようとした瞬間、
「あれ?なんか変だな…鍵…」
鍵なんて、その古屋にはそもそも無かった。
私はドアを色々探したが、鍵はない。
外から入ってこようと思えば、入ってこれる。
違和感で外に出るのを躊躇していた。

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