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「アナタガ ホシイ。ソシテ イツカ アナタモ、ホウギョウ ニ ナル」
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そのとき、宮司が封印文を読み切った。
「汝、器を捨て、元の巣に還れ!」
光が弾け、影は一瞬、苦しげにのたうった。
そして、谷本の体から黒い影が“吐き出され”、どこかへ消えていった。
谷本は気絶したまま、静かに呼吸をしていた。
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「……終わったのか?」
俺が呟くと、宮司はゆっくり首を振った。
「“封印した”だけです。祓えたわけではない。
“喰い守”は、器を失って眠っただけ。
また誰かが、あの村に“4人”で足を踏み入れたとき――目覚めるでしょう」
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◆
翌朝。俺と北野と谷本の3人は、宮司の車で村を出た。
振り返ると、集落の入り口に、石田が立っていた。
目の焦点は合っておらず、口元は微笑んでいた。
ただ、手には、白い手ぬぐいが握られていた。
“ミマツリ”の、あの布。
「……また、来てね」
そう言ったかのように、彼は静かに微笑んだ。
谷本は、なんとか一命を取り留めた。
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