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妖怪・風習・伝奇

かしわさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

ミマツリ ― 神人の村 ―
長編 2025/07/28 17:59 8,372view
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目を覚ましたのは、村を出て3日後。病院のベッドの上だった。

けれど、彼女の記憶は途切れていた。

「…私、“あや”の中にいた気がする」
「誰かが、ずっと私の名前を呼んでた。
でも、もうひとつの声が、“まだ終わらない”って……」

一方で、石田の行方は結局分からなかった。
警察に捜索願は出したが、集落には彼の姿はなかった。
ただ、谷本の枕元に“白い手ぬぐい”が置かれていた。

赤黒い血と、古い文字が滲んだそれを、俺は封筒に入れ、鍵付きの箱にしまった。

夏が終わり、秋になっても、あの村の記憶は消えなかった。
霧島先生からも、あの後連絡はなかった。

北野とは時々会うが、どこか様子が変わった気がした。
祭囃子のような音を、空耳で聞くようになったと話していた。

「なあ、あの村……ほんとに封じられたのか?」

「封じたのは、“あや”だよ」
谷本がそう言ったのは、10月の終わりだった。

「たぶん、彼女が“器”になりながらも、最後まで自我を保ってた。

でも、それは“喰い守”にとって邪魔だった」

「……あやは、味方だったのか?」

「そう思いたい。
けど――私の中に、まだ彼女の“記憶”がある。
だからきっと、私ももう、“普通の人間”じゃない」

それから1年後、霧島先生が自宅で変死したという報せが届いた。

部屋の壁には無数の爪痕、そして、血で書かれた一文が残されていたという。

「四人目が来た」

10/11
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