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その夜、谷本が再び発作を起こし、口から黒い液体を吐いた。
しかもその声は明らかに少女ではなかった。
「おまえたちは、わたしの“なか”に来た。
もう だれも 出られない」
宮司が緊急に“祓い”の準備を始めた。
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「いまから、“神人の間”で祭の逆儀を行う。
“神”を追い出し、器を壊す。……ただし、代償は出るかもしれない」
「……代償って?」
「うまくいけば、谷本は助かる。
でも“神”が宿りきってしまっていた場合、彼女を**“完全に喰わせる”しかない**」
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「じゃあ、石田は――」
「もう手遅れです。
すでに“神人の肉”として、あやの器の一部になっている」
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集会所の“神人の間”。
谷本は中央に寝かされ、宮司が祝詞を唱え始めた。
空気が一瞬で変わった。
襖がガタガタと震え、電気もないはずの天井から、眩いほどの白光が漏れた。
その中で、谷本が叫ぶ。
「来てる、来てる!……“神”じゃない、これは、ひとじゃない!!」
天井に浮かぶ影。
女のような、子どものような、けれど目が4つ、口が裂けた影。
そして、そいつは――“笑っていた”。
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