俺と北野が飛び出すと、そこには誰もいなかった。
ただ、地面には石田のスマホが落ちていた。
画面はついたまま、動画が撮影されていた。
再生すると、森の中を歩く石田の姿、そして、突然現れた白い着物の少女。
顔は見えない。
けれど、彼女はカメラに向かって、こう言った。
「つぎは――きみだよ」
谷本の異変を受けて、俺と北野は再び梶尾婆を問い詰めた。
「何も隠してないって言ったよな。ミマツリは終わったって――ウソだったのかよ」
婆は黙っていたが、やがて低く言った。
「終わったと思っていた。……けど、“神”が目を覚ました。
おまえたちが来た夜、あの子――“あや”が、また動いたんじゃ」
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そのとき、村の入り口から軽のワゴンが走ってきた。
降りてきたのは、白装束に身を包んだ40代くらいの男性。
「日向宮司です。……霧島先生から連絡を受けて急ぎました」
「この村の“神人信仰”は、わたしの家に代々記録が残っています」
俺たちは安堵した。やっと、まともな“大人”が来た。
だが宮司の顔は暗かった。
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「……問題は、“神人”ではない。
“あや”を使って“神”に扮し、儀式を繰り返している“何か”がいる。
古文献に名前だけ残されている存在です」
「名前……?」
「“喰い守(くいもり)”。
“神人”を喰らい、“器”を永遠に使いまわすことで、
この地に閉じ込められて生き永らえる“存在”」
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「ミマツリの真の意味は、“神を迎える”ことではなく――
“神を閉じ込める”ための封印だった」

























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