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妖怪・風習・伝奇

かしわさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

ミマツリ ― 神人の村 ―
長編 2025/07/28 17:59 8,366view
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石田がいなくなった次の朝、空気は明らかに“重く”なっていた。
昨日までの風の音や虫の声が消え、代わりに、どこからともなく低い唸りのような**「うぉぉ……」**という声が絶えず耳にまとわりついていた。

俺と北野、そして谷本の3人は、梶尾婆の勧めで村の奥、「旧神社跡」に向かうことになった。
そこに“神人”に関する記録や、まだ語られていない儀式の真相が残っているという。

神社へ向かう道は、草に埋もれていて、人が通った気配がまるでなかった。

ただ、途中で不自然なものを見つけた。

白くなった骨。
獣のものかと思ったが――それにしては骨の形が、あまりにも“人間”に近すぎた。

「……たぶん、石田じゃない」
谷本がぽつりとつぶやいた。

「どうして分かるんだよ」
「“匂い”が違う。これは、だいぶ前に喰われたもの」

「喰われた」――その言葉に俺と北野は絶句した。

神社跡に着くと、祠は崩れ、御神体の石像は頭部だけが削り取られていた。

ただ、その台座にだけは苔も草も生えておらず、まるで“誰かが定期的に手入れしている”ようだった。

「ここだけ、生きてるみたいだな…」

北野がぼそっと言った。

そのとき。谷本が突然、頭を抱えて倒れ込んだ。

「やばい……入ってくる。誰か、わたしの中に入ろうとしてる」

彼女の目が見開かれ、瞳孔が揺れていた。

「お前……じゃない、誰だ……誰だっ…誰が器か……誰を喰らう……」

異常なのは、彼女の声の調子だ。まるで複数の声が重なっているように聞こえる。

「谷本!? 大丈夫か!?」

俺が揺さぶると、彼女は突然、意識を取り戻した。

「…私、いま“あや”と目が合った。
祠の中にいた。――まだ、喰われてなかった」

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