「今の…なんだよ?」
とA。
「猫じゃないよな…」
と聞くBも声はかすれていました。
動物の声ではないと感じました。なぜなら叫び声は一度きりで今はトンネル内は風の音しか聞こえないからです。
私たちは声がしたであろうトンネルの出口を眺めます。ぽっかりと空いたトンネルの出口から見れる木々が風で揺らいでいるだけでした。
「鳥か、なんかだろ。帰ろう。」
私はあえて大きな声を出して提案します。一刻も早く離れるべきだと、心の内で感じてました。
言い出しっぺのBも決してそこまで心霊スポットに興味があったわけでもなかったため、「そうだな…」と呟くと入り口の方に体を向けました。
Aだけはずっと無言でトンネルの出口を眺めてました。そんなAの腕をつかんだ瞬間、
「なぁ、赤ん坊の声、聞こえないか」
Aは私たちをビビらそうとしているんだと思いました。
私が「何言ってんだよ」とAを小突きます。
しかし、出口をじっと見つめるAの真剣な表情は、冗談を言っているようには見えませんでした。
私とBは、そんなAの様子に不気味さを覚えながら、改めて耳を澄ませます。
「……う、うぇ……うぇぇ……」
かすかに、遠くから赤ん坊の泣き声のような音が聞こえてきました。はっきりとした声ではなく、風に混じって届くような、耳の奥をくすぐるような音です。
私たち3人は再度押し黙りました。
泣き声は、出口からトンネルに反響するように聞こえます。先程の絶叫とは違い、かすかだが継続している泣き声。
意を決したようにBが出口に向けて一歩進んだ瞬間でした。
ぴしゃりと泣き声がやみました。
Aの生唾を飲み込む音が聞こえるほどの静寂の中、
「うぎゃおぁぁぁぁぁあおあうぁぁぁぁあ!!!」
Aがその場で尻もちをつき、Bは何か切れたように音のする出口にかけました。私はBに何かあればまずいと考え、すぐにBを追いかけました。

























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