大学生の夏休みのある夜、私は友人AとBの3人でドライブに出かけた。
きっかけは、Aが親から譲り受けた車を手に入れたこと。免許を取ったばかりのAは、運転の練習も兼ねて、深夜に出かけようと私たちを誘った。
Aのアパートに集合すると、彼は昼間に洗車までしていたらしく、グレーのセダンを撫でながら笑っていた。
助手席には実家暮らしで運転経験のあるBが座り、私は後部座席に座りました。
ドライブは順調だった。Aのぎこちない運転に笑いながら、バイトや研究室の話をして、目的もなく夜道を走った。
しばらくして、Bがスマホをいじりながら言った。
「この辺に心霊スポットあるらしいぜ」
私は「行くか」と言い、Bも「行こうぜ」と軽い調子で賛同した。その時は、何も考えていませんでした。
Aだけは渋い顔をしていた。怖がっているというより、目的地が山道を通ることを知っていたからだろう。
しかし私とBの勢いに押され、Aはしぶしぶナビを設定した。
目的地は、地元で噂される古いトンネルだった。
林道を進むと、道が少し広くなった場所があり、ゲートの手前に車を停めた。
ゲートを越えて少し歩くと、石造りのトンネルが現れた。
照明はなく、奥は真っ暗だった。
私たちは、もうその時点で全員は心の内に帰りたがっていたと思う。ここまで来た以上、帰るという提案は誰もできるわけがなく、スマホのライトを頼りに私たち3人トンネルの中に入っていきました。
トンネルを入ると、空気は重く、壁にはいたるところ苔が生えておりました。湿度と据えた匂いが充満しており、どこか息苦しさを感じます。
Bは最初は騒がしくしていたものの、重苦しい雰囲気で押し黙ってしまいました。Aも私も口数は少なく、足元や壁を散漫に照らしてはトンネルの中を進んでいきました。
トンネルといえど、百メートル程度、出口は初めから見えており、数分もせずに私たちはトンネルを抜けました。怪奇現象らしいものは、特に起きませんでした。
トンネルを抜けた私たちは、緊張の糸が解けたのかのようにそれぞれ安堵の声を漏らします。私たちは「B、滅茶びびってたなぁ」とからかい合いながら3人で一服をしました。
それぞれ一服を終え、Bが「戻るか」と声をかけ、私たちは来た道を引き返すことにしました。
トンネルの中は、行きと同じように静かでした。行きとは違い、私たちは3人で世間話をしながら歩いてました。
相変わらず空気は湿っていて、スマホのライトが照らす先には苔の生えた壁が続いています。
半分ほど進んだ時でした。
「ぎゃぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁあ!!!」
突然、泣き声のような甲高く、耳をつんざくような叫び声が響きました。
私たちは反射的に体を震わせ、一斉に振り返ります。スマホのライトが揺れ、壁に不規則な影が踊ってるように映っていました。
誰もいない。
叫び声はトンネル内で反響し、薄まり、打って変わって吸い込まれていくような静けさだけが広がっていました。






















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