夜はいつの間にか深まり、ファミリーレストランのざわめきも徐々に薄れていった。
我々大学のサークル仲間は、先輩の一言に不意を突かれ、どこか冷たい空気の中で身を縮めていた。
「変な話って、身に覚えがないと信じられないもんだよな」
その言葉は、あたかも空間の隅から静かに忍び寄る影のように、重く沈み込んだ。
彼の瞳はどこか遠くを見つめており、言葉の一つ一つに、見えない恐怖が滲んでいた。
「俺、最近ずっと“見られてる”気がしてるんだ」
最初は冗談か、酔いのせいかと思った。だが彼の表情は真剣そのものだった。
「誰かが俺をつけてるのか、ストーカーかと思ったんだが、違うんだよな。
いや、視線だけが俺のあとから追いかけてくる感じっていうか……」
その“あとから”という言葉が、重く不吉な響きを伴い、私の背筋に冷たいものを走らせた。
彼の住むアパートの廊下。
夜遅く帰宅すると、必ず誰かが覗いているような気配がした。
踊り場の影、エレベーターの鏡の中、部屋の前の郵便受けの隙間。
そこに人影はない。
しかし、そこに確かに“何か”が存在しているのだ。
彼は何度も振り返った。
だが振り返るたびに、そこには誰もいなかった。
「最初は気のせいかと思った。
でも、最近スマホに妙なものが映るようになって……」
彼はスマホを取り出し、画面を見せてくれた。
そこには、彼が深夜、自室で寝ている様子を映した動画があった。
録画の開始ボタンなどは押されていない。触った痕跡もないという。
しかし、カメラの位置は妙だった。
彼の顔のすぐ真上、ベッドのすぐ脇から撮影されていた。
だが、その場所には彼の部屋にそんな高い場所も、設置場所もないはずだった。
そして画面の片隅に、不気味な白く細長い影が揺れている。
それが「目」なのか「指」なのかは定かではない。
その影は、ゆらゆらと揺れながら、じっと彼を見つめていた。
「一番怖かったのはな……」
彼は言葉を詰まらせた。少し間を置いてから、続けた。
























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