「動画の中の俺が、徐々に変わってきてるんだ」
「変わってる?」
「うん……目が合うんだ」
彼の言葉は震えていた。
画面の中、布団の中にいる自分が、突然カメラの方を見つめ返すのだ。
まばたきもせず、表情も変えずに。
無表情で、ただ、じっと。
まるで録画された“自分”が現実の自分に気づいているかのように。
「昨日は、ついに喋った」
「喋ったって?」
「『見てるの、わかってる』って……」
その夜、彼は自宅に帰らなかった。
私たちは説得しようとしたが、結局ファミレスで朝を迎えた。
翌日、彼とは連絡が取れず、大学にも現れなかった。
警察が動くほどのことにはならなかったが、
彼の部屋の壁に拳大の穴が開いていたという話を聞いた。
穴の先は、ただの構造壁で、何もない。
しかし、穴の縁だけが内側から黒く焦げていた。
それはまるで、見えざる力がそこからこちらを覗いていたかのようだった。
そして、今。
私にも妙なことが起こっている。
机に向かっているとき、背後に何かの気配を感じるのだ。
振り返ると誰もいない。
だが、スマホのインカメラが突然勝手にオンになることがある。
今日、昼間に撮った写真を見返すと、背景に白く細長い“指”のようなものが写っていた。
それは私の手ではない。
恐らく、私はもう“見られて”いるのだ。
この話をしていることも、きっと“あの何か”は知っているのだろう。
スマホの向こう側で、今も――
じっと、私を見返しているのだから。
この話は怖かったですか?
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