メロン、お好きですか？

父さんが入社して3年目になろうとしていた頃、仕事にもかなり慣れ後輩や部下もでき、責任も増えかなり疲れていた頃、同期仲間たちと久しぶりに飲みに行くことになった。
同期13人全員で集まるのは、入社式依頼のことでたいそう盛り上がったそうだ。
やはり飲み会の場でも場を回していたのは父さんだったらしく、なにやら自慢げに話してたのを覚えてる笑
1次会も終わり、父さんはみんなからお金を預かり支払いを済ませて店をでると、数メートル先に2件目に移動している同期の姿が見えた。
急いで追いかけようと走ろうとした時、声をかけらてた。
ノリコさんだった。
父さんはびっくりして、何をしているのかと尋ねると、父さんを待っていたのだと。
何か用でもあるのかと聞くと、「お付き合いをしてほしい」という内容だった。
急な告白に驚いたが、父さんはお断りしたらしい。
だよな、父さんにはミナミさんがいるもんね笑

ノリコさんは「そう。」とだけ言い残しその場を去っていった。
父さんはパッとしない感情だけを残され、同期のもとに向かった。
ただ、父さんの中には明日以降、ノリコさんとは同じ社内の人間として毎日顔を合わせるわけだし、ノリコさんとの関係がぎくしゃくするのはやだなと思い2次会を過ごした。
が、意外な形でこの問題は解決した。

次の日父さんが仕事に行くと、ノリコさんは朝一で職場にきて、退職届を残していなくなっていたらしい。
幸いにも父さんとノリコさんのぎくしゃくした関係は始まることなく終止符を打ったのだ。

そんなノリコさんのことも忘れていたある日、事件が起きた。
会社で朝の事務作業を済ませていると、上司から急に呼び出された。

「ミナミさんが事故にあった。」
「○○病院に運ばれたので、容態を確認しに行くからお前も来い。」

衝撃だった。
父さんと上司は急いでタクシーを拾い、○○病院へと向かった。
病院につくなり、受付にミナミさんの部屋番号を聞くと、ミナミさんはICUにいて面会謝絶とのこと。
病院にはミナミさんのご両親のほかに、警察官が二人いて声をかけられた。

父さんは放心状態で、警察官の話なんかまったく耳には入らなかった。
ただただミナミさんの容態を心配することしかできない自分に腹が立った。
その時父さんは、気が付いた。

ああ、僕はミナミさんが好きなのだと。

後から上司に、警察から聞いた話を伺うとミナミさんは地下鉄のホームへ降りる階段から転落したとのこと。
防犯カメラの映像から、ミナミさんが階段から落ちる前にミナミさんの後ろに人影があり、その人物がミナミさんを階段から突き落とした可能性があるとみて調査を進めているとのことだった。
翌日、会社にはミナミさんのご両親から退職届を提出されたらしい。