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ヒトコワ

右園死児さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

メロン、お好きですか?
長編 2025/07/01 12:12 6,921view
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メロン、お好きですか?

今日は僕の父さんの命日だ。
二つの遺影が並ぶ仏壇の前で、僕は手を合わせていた。

この日になると、父さんとの思い出が蘇る。

僕の父さんはメロンが食べられなかった。
まあ父さんて言っても、血縁関係はないらしい。
僕は施設で生まれて父さんに引き取られた。
僕は優しい父さんが大好きだった。
実の息子のように可愛がってくれたし、男手一つで僕を育ててくれた。
そんな父さんが数年前に亡くなった。
父さんが亡くなる少し前、僕をそっと病室に呼び、この話をきいた。

なぜ僕にこの話をしたかはわからない。
実際に起きたことなのか、もしくは父さんの作り話なのか。
だからこの話は、噂話程度に聞いてほしい。

「お前に話しておきたいことがある。」

父さんは、たくさんの管を体につなぎながら話し始めた。

父さんは関東のそこそこ大きい会社に大卒で新入社員として入社した。
同期が13人いて、お調子者だった父さんはすぐ同期の中心になった。
当時の日本は高度経済成長期に入ったこともあり、仕事は忙しいながらも今の僕たちが見たらびっくりするようなお給料をもらってたんだって。毎日のように、同期のみんなと飲み歩いたり、それこそ好きなものもたくさん買えたって言ってたし、貯金もたくさんあった。
して、父さんには特に仲の良かった「ミナミさん」って名前の同期がいた。
父さんが言うには、ミナミさんは仕事は特段できたってわけじゃないけど、とにかく愛想がよくて誰にでもすぐ仲良くなれるような明るい子だったんだって。
当時ミナミさんとは、馬が合ったらしく休みの日でもあったりしていた。

別に付き合ってるってわけじゃないけど、二人で食事も行くし、二人で出かけたりもする、そんな関係だった。
ミナミさんがじいちゃんに好意を寄せていたかはわからないけど、同期の中では特別仲のいい人だった。
そんなミナミさんと出かけるときは必ず、隣同士で座るときはミナミさんが左側、父さんが右側に座るっていうのが二人の仲の暗黙のルールだったらしい。
ミナミさんは左利きで、僕の父さんは右利きだったから、ミナミさんが右に座って父さんが左に座ったら利き手同士がぶつかっちゃうからなんだって笑
僕が思うに父さんは、このミナミさんに惚れてたんだろう笑

忙しくも楽しい日々を過ごしていた翌年の4月に、新入社員が入社した。
その会社の社風として前年度に入社した、新入社員がその年に入社した新入社員の面倒を見ることになっているらしい。
かといって、父さんたちも入社一年目のペーペーなのでメンタルケアだったり相談事に乗るくらいの役回りだったらしいんだけど、父さんが担当した女性が少し癖のある女性だった。
その女性は、「ノリコさん」っていうんだけど暗い感じの人で愛想もあんまりよくて、決して美人とはいえない感じであんまりいい印象の人ではなかったらしい。
魔女みたいな人だったって言ってたな。
でも父さん、人を見た目で判断しちゃいけないよ?
でもノリコさんは父さんにはすごい話かけてくれたらしくて、趣味はなんだとか休みの日は何してるの?とか。
父さんもなんで自分にだけはこんなに明るく接してくるんだろうって疑問には思ってたらしいんだけど、本人に「なんで周りと自分の接し方に違いがあるのか?」なんて聞けるわけもなく、ぎこちない関係が続いたらしい。

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コメント(1)
  • 正直、文章は拙い部分もあるけど、しっかり怖かった。ゾッとさせられた。もっと伸びてもいいのに!

    2025/07/10/19:37

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