目隠しを取ろうとしたら、後ろから声がした。
「動かない方がいいよ。指示する前に動いたら殺すから。」
それはそれは冷たい女の声だったね。
それから女はこう続けた。
「その場から動かずに、目の前のものを思いっきり押して。出来ないなら殺すよ。」
従うしかないよな。俺の命完全に握られてるわけだし。
その時の俺は、今まで感じたことの無い恐怖に負けて、産まれたての羊くらい震えてた。情けないよな。
なんで、どうして、俺がこんな目に合わなきゃ行かないんだ。
確かに俺は価値のない人間だったかもしれないけど、人に恨まれるようなことはしてない。
なんなんだこの状況は。
なんで、なんでって、ずっとずっと心の中で繰り返した。頭の中がぐるぐるして、思考が纏まらない。
涙がボロボロ零れ落ちて
心臓が信じられないくらいバクバクしていた。
「はやくして。」
そんな俺を全く気にもとめず、ひたすら冷たく、女は言い放った。
もう、考えてる時間はなかった。
押せってどういうことだよ。って、半ばヤケクソに目の前に何があるかも知らず、思いっきり手のひらを前に押し出した。
冷たい物に触れて、重かったけど、すぐに手応えが無くなった。
……その瞬間だった。
「……ありがと。」
冷たい女の声に安堵の音が混じっていた。
1秒くらい立って、ゴシンッ!!!ってすげえ鈍くて重い音が”下の方”から聞こえた。
嫌な予感がして、すぐに目隠しを外す。
そこは古い雑居ビルの屋上だった。
手すりが古くなっていて、ところどころ無くなっている。
俺は手すりが無い部分の縁のすぐそこに立っていた。
下の方をのぞき込むと、赤黒い液体と、へしゃげたパイプ椅子、四肢が変な方向に曲がった、中肉中背の男が落ちてた。
ふてぶてしい顔がこっちを見上げてる。
もう確実に死んでいるはずなのに、目が合った。
渋沢栄一に似てるって思ってた、俺があの日助けた男だ。























そんなこと考えるな!生きろ!
とてもリアルで、すごく怖いお話でした。
しぬなななななななななななななな
とてもスリルでした。