それ以上、教えてくれなかった。
今朝、目覚めると部屋の天井に文字があった。
「おはよう、って言いましたよね?」
手書きのような、不自然な筆跡。
どこかで見覚えのある字――自分の字だった。
部屋のどこを調べても、鍵は開いていない。
でも毎晩、録音アプリには新しいファイルが増えている。
今日も、最後のファイルを再生してみる。
ノイズ混じりの中に、微かな囁き。
「……じゃあ、今夜は……“こんばんは”ですね……」
“お化け”じゃない。
ちゃんと「話が通じる」からこそ怖い。
あなたがたった一度、挨拶を返さなかったことを、あの人はずっと覚えている。
そして明日の朝、また来る。
「おはよう」と言うために。
……あなたは、返しますか?
返さなければ――また録音が、増えます。
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