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ヒトコワ

akabanriさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

妄想不審者
短編 2025/06/02 20:15 1,624view

憂鬱な朝、今日も学校へ行き、いつも通り授業を受ける。
俺は授業のことはそっちのけで、妄想の世界へ飛び込んだ。

「校長先生、お呼び出しです」と、不審者が来た時の放送が鳴る。
……あれ?やけにリアルな妄想だな、と思ったら本当に学校に不審者が来ていた。
妄想の成果を見せてやる。そう意気込んで、先生の静止を無視して教室を飛び出す。

実際の不審者は、妄想していたよりもずっとガリガリで、今にも死にそうだった。
先生たちが駆けつけてくる前に肩をつけてやろう、と指をポキポキしながら、「こいよ」と言って挑発してやった。「舐めるなよォォォォ!クソガキがぁぁぁぁあ!」と叫び、不審者は刃物を手に突進してきた。

僕はそれをひらりとかわし、手を軽く捻ってやると、「ぎゃぁぁぁぁあ!」と叫びながら倒れた。俺は悦に浸っていた。クソつまらない学校生活の中で、まさかこんな刺激的な展開が待っていたとは。日頃の妄想が、こんな形で現実になるとはな。

不審者は、そのガリガリの体から想像もできないような悲鳴を上げて床を転がった。先生たちが駆けつけてくる足音が聞こえる。この勝利を誰かに見せつけたい。だが、それよりも早く、俺は不審者の顔を覗き込んだ。

「なんだよ、もう終わりか? 雑魚が」

俺の言葉に、不審者はピクリと反応した。その顔は、恐怖と苦痛で歪んでいたが、その奥に妙な光を宿しているように見えた。

「おい、お前……」

不審者がかすれた声で言った。「お前は、見えるのか?」

気持ちよくなって、「お前の動きなんて止まって見えるわ」と言ってやった。

その時、不審者の体が小刻みに震え始めた。痙攣のように激しくなり、床に血が広がる。内臓でも破裂したのか? しかし、その血は、なぜか黒く、ドロリとしていた。そして、血溜まりの中から、いくつもの泡がブツブツと音を立てて浮き上がってくる。

泡が弾けるたびに、腐敗したような、言いようのない悪臭が廊下に充満した。そして、その泡の中から、小さな、黒い虫のようなものが這い出てきた。それは、まるで無数の目玉のようだった。

「ひ、ひぃっ……!」

俺は後ずさった。不審者の体は、見る見るうちに萎んでいく。皮膚はカサブタのように剥がれ落ち、肉は腐り、骨が露わになる。だが、その骨の隙間から、先ほどの目玉のような虫が、ぞろぞろと湧き出てくるのだ。

虫たちは、一斉に俺の方を向いた。そして、その目玉の一つ一つが、ギラリと光った。その光は、俺の深層意識に直接語りかけるように、恐ろしい幻覚を見せた。

俺は、今まで作り上げてきた妄想の世界に引きずり込まれていた。だが、それはいつもの楽しい妄想ではない。俺が倒してきたはずの不審者たちが、形を変え、異形の姿となって俺に襲い掛かってくる。俺の楽しい妄想は、悪夢となって帰ってきた。

「お前は、俺と同じだ……」

消えかけの不審者の声が聞こえた。

「お前も、いずれは……見えるようになる……」

俺の背筋を、冷たいものが駆け上がった。先生たちの足音は、もう聞こえない。廊下には、俺と、無数の目玉のような虫、そして、見るも無残な不審者の残骸だけが残されていた。

病院のベッドで目が覚める。見舞いに来た教師によると、俺は突然教室から飛び出して廊下で失神したみたいだった。あの時見たものは絶対に妄想じゃないはずだ。

と言う妄想を終えると、放送が鳴った「院長先生、お呼び出しです」

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コメント(1)
  • 最後は院長になってるってことは、精神科に入院してるってこと?

    2025/06/03/12:29

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