それに俺は誰も部屋にあげたことなんてない。何故知ってるんだ。
黙り込んでしまった俺をよそに、相手は続けた。
*
*
「あなた、知りませんか?サチコは……」
プツッ、ツー、ツー、ツー………
そこで電話が切れた。
しばらく受話器を持ったまま動けなかった。
それ以来間違い電話はかかってこなかった。二度と。
___________
ある日の事。仕事で帰りが遅くなり、辺りは既に真っ暗。
部屋に入って電気をつけ、リビング入ってすぐの所にある姿見を見ながらスーツを脱いでいると、鏡に違和感を感じた。
俺の右後ろくらいに、ちゃぶ台と座椅子があるんだが、ちゃぶ台の下から、黒い影が這い出てくる。
実際にちゃぶ台の方を見ても何もいない。でも鏡を見ると、何かいる。
サチコ……? 間違い電話が頭をよぎった。
寒気がする。身の毛がよだつとはこの事なのか。
鏡の黒い影から目が離せない。
黒い影は少しづつちゃぶ台から這い出てくる。
目を離したいのに、視線が釘付けになる。体も動かせない。
そしてとうとう、”サチコ”の姿がハッキリと見えるようになった。
“サチコ”の顔は、上下逆さまについていた。額のところに顎があり、顔の下の方に目がついていた。
そして、ハッキリと俺の右後ろからこう聞こえた。
*
*
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『……やッと、気づイてくれタ』
[完]
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