サチコちゃん、いますか？

少し前から、毎晩、家の固定電話に間違い電話がかかってきてた。

電話の内容は「サチコちゃんいますか？」って、やけに棒読みの声。

初めは気にしてなかった。誰にでも間違いはある。

でも2日目、3日目からは腹が立ってきて、
違いますって、番号間違えてるって言ってるでしょ
気をつけろよ
って強い口調で言うようになっていった。

着信拒否すれば良かったんだけど、なんで俺がわざわざ着信拒否しなきゃ行けないんだ？こいつが気をつければいいだけだろ。
……って思って結局そのままにしていた。

でも、1週間続いたくらいで、逆に不気味になってた。

だって、そんなに間違えるか？
まぁ、毎晩律儀に出てる俺も俺なんだが…

で、次かかってきたら言ってやろうとおもったんだ。お前、何考えてんだよ。
イタズラなら本気で警察に相談するぞってね。

そしてその夜ちゃんと電話はかかってきて、念の為録音を開始してから電話に出た。

やっぱりいつもの棒読みで
「サチコちゃんいますか」ってかかってきた。

俺は食い気味に、
「お前な、イタズラなら……」

そう言いかけたところで、相手が遮ってきた

「いますよね、サチコちゃん。」

流石にカチンときて、

「お前、いい加減にしろよ！」って怒鳴った。

でも相手は気にも止めずこう続けた。

「あなたの部屋から、聞こえるんですよ。サチコちゃんの声。」

ずっと一定の抑揚で、ずっと棒読み。

「あなた、部屋の真ん中にちゃぶ台と座椅子あるでしょ？」

思わず視線をちゃぶ台と座椅子に移した。

「ちょうどその辺から、サチコの声が聞こえるんです」

気持ち悪い。なんなんだコイツは。