廉の目が、今度は私の背後の障子を見ていたからだ。
障子の向こうには、誰もいない──はずだった。
その晩から、変化が始まった。
廊下の端に、小さな足音。
畳の上に、足跡のような濡れ跡。
鏡に、私の背後で笑う“白い子供”が映る。
夢に廉が出てくる。
声を出さず、笑いながら口を開ける。
その口は──喉の奥まで、“歯がない”のに、笑っている。
目が覚める。
だが、夢が終わっていない。
枕元の畳が、重く、凹んでいる。
天井の隅から、誰かが覗いている“音”がする。
再び祓いを試みた。
だが、詞の最初の一文字が、どうしても出ない。
喉に手をやると、舌が動かない。
舌の根元に、何か冷たい指が絡みついていた。
内側から。
「廉の中ではなかったのか……?」
違う。
──“廉は器”だった。
本体は、すでに私の中にいたのだ。
そして、あの夜。
儀式の最中、部屋の鏡に映ったのは──廉ではなかった。
いや、“廉だったもの”の残骸だ。
白く濁った目、耳のない頭、裂けた口から黒い煙を吸い込む何か。
私は叫んだ。
「祓え──!!」
だが四隅から、重なった声が聞こえた。
「──おまえが開けた」
「──おまえが差し出した」
「──おまえが招いた」
「──おまえが、最初だった」
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ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ人生おわた⭐︎