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呪い・祟り

ないものさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

笑顔の一家
短編 2025/05/18 09:56 6,201view
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 その直後。
 これまでピクリとも動かなかった母親の肩が震え、笑いはじめました。声は出ているような動きなのに、笑い声は聞こえない。喉を震わせているのに、音だけがまったく出ていません。
 それに呼応するように、他の家族も順番に笑い出しました。
 口元だけが、カカカ……と音を立てそうな勢いで、でも音は立てずに、痙攣するように動き、笑う素振りをしています。

 彼女はそれを見て、微笑みながら「うち、ちょっと変わってるでしょ?」と問いかけましたが……その瞬間、わたしは心の中で「これはダメだ」と確信しました。
 言葉が通じないとか、常識が違うとか、そういった次元ではない――人間のふりをしている“なにか”の中に混じってしまったような感覚。根本的に異なる存在を前にしている、という理解が、突然襲ってきたのです。

「すみません、帰ります」

 危機感をおぼえたわたしは、内心びくびくしながらもそう言って、その場から立ち上がりましたが……立ち去ろうとするわたしを、誰も止めませんでした。

 ただ、玄関を出る直前、背中越しに誰かがぽつりと呟いたのです。

「笑っているのに」

 わたしは、振り返らずに、ただ走ってその場から逃げました。

 * * *

 それ以来、彼女とは連絡を取っていません。
 何度か着信がありましたが、出ることができませんでした。しばらくは、思い出すことすらも怖かったのです。記憶を封印して、あのサークルにも顔を出さずに、大学生活をただ惰性で過ごしていました。

 でも、今になって思い返すと……あれが本当に異常なことだったのかどうか……正直なところ、よくわかりません。誰かが怒鳴ったわけでもないし、責められたわけでもありません。みんな、ただ笑っていただけだったのですから。
 笑っている人を、どうこう言う理由なんてありません。今思うと、無理に否定することもなかったのかもしれません。だから、もういいのです。そういうことは、もうどうでもいいのかもしれません。

 そう考えているうちに、不思議と、口角が緩んでしまいました。

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コメント(1)
  • こわ、、、、

    2025/05/23/14:46

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