神通力ってやつだと思う。
わたしが何を食べてきたかとか、泣いたあとの顔とかも、ウラはわかってしまう。
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でも、怖くはなかった。
ウラは昔、人を食べてたんだって。
どさくさに紛れて、じゃない。都に正面から入って、人を食い荒らしたこともあるって。
「若いころの人間の肉は、ラーメンのようなものでな。
熱々を勢いですするものだ。滋味もある。
……だが老いれば、味覚も趣向も変わる」
だから、ウラは都から遠いこの神社に封印された。
誰にも会えないように。
3. 猫屋敷と裁ち鋏
進雄神社の隣には、猫がいっぱいいる古い家がある。
わたしは勝手に“猫屋敷”って呼んでる。
そこには、九十歳ぐらいのおばあさんが住んでいて、
いつも縁側で猫に囲まれて座っている。
あの人が持っている裁ち鋏――とても古い、婚礼衣装を仕立てるときに使っていたっていう鋏が、
どうやらウラにとっては「怖い」らしい。
「……あれは祝ぎ(いわい)の鋏だ。
ひとの幸せをなん度も仕立ててきた。
そういう道具は、わたしのようなものには毒となる」
人間には無害なのに、ウラのような存在には触れることすらできないのだそうだ。
でも、おばあさんはとっても優しい。
たまに猫のおすそわけで、煮干しをくれる。
4. 鬼の昔話
わたしが「ウラはどのくらい強いの?」と聞いたとき、
ウラはこんなことを言っていた。
「酒呑童子? 相撲では勝ったことがある。
あやつは肝が小さくてな、四股の音に怯えおった」
「羅生門の鬼など、片手で十分」






















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